2010年01月12日

総合商社の機能と組織 (7) 

 タテとヨコとは? − タテの三菱商事、ヨコの三井物産

 商社では、かつて 「タテの三菱商事、ヨコの三井物産」 とよく言われた。タテとヨコとは、営業の組織体制の特徴を示したもので、 「タテ型組織」 とは、営業部門またはグループ→ 営業本部→ 営業部と、営業部門ごとにタテの指揮命令系統が明確なトップダウン型組織である。

 一方、 「ヨコ型組織」 とは、社長に直結する営業部に大きな裁量権を与え、現場が自由奔放に展開できるフラット型組織である。

 三菱商事は営業のタテの権限が強いのが特徴で、海外店の駐在員も背番号のある出身グループの指揮命令系統化にあり、東京本社の意向に沿って動いている。また、海外の事業会社は、多くがその会社の所在地域にある現地法人の主管ではなく、東京本社の営業グループの主管である。

 一方、三井物産は、戦前から伝統を受け継いだ 「部店独算制」 と呼ばれる体制を敷き、規模の大きな営業部の部長が現場で予算・決算責任から投融資、人事までの一切の責任を負っていた。

 この制度では、国内店、海外店は場所長が利益責任を負い、派遣員や駐在員は所属する場所長の指揮命令権の傘下に入り、一時的に背番号が変わることになる。また、海外の有力事業会社の多くは、所在する地域の現地法人が主管している。

 この伝統ある部店採算制も、本部制の導入により本部店独算制に改められ、2004年、国内店については独算制にを廃止して、営業部門がタテでみるようになり、100年の歴史を有した制度もついに幕を下ろした。

 − 組織の三菱、人の三井 −

 タテで組織の指揮命令系統がしっかり三菱商事は 「組織の三菱」 と呼ばれたのに対し、部店独算制で現場の裁量権を大きくしていた三井物産は若手社員までが、考えながら動く企業文化を醸成し、 「人の三井」 と言われるようになった。

 サッカーにたとえると、商事が組織プレーを重んじる欧州タイプで、物産はスーパープレーヤーが個人技で他を圧倒する南米タイプといえるだろう。

 他の大手商社は、伊藤忠商事がカンパニー制、住友商事と丸紅が部門制を敷くため、ほとんどタテ型の組織体制を敷く。

 ただし、海外店の経営は、東京からコントロールするよりも、現地駐在員に権限を与え、迅速な判断をした方がグローバルな競争時代に合っている。このため、営業主管の事業会社に現地法人が指導を行うなど、タテとヨコが融和した経営が多い。

           (引用: 日本実業出版社、よくわかる商社)

 
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2010年01月11日

就職志望企業 大手商社に人気

 企業研修・採用支援のgusiness (ギジネス、東京・港) が2011年春卒業予定の大学生の志望企業ランキングをまとめたところ、大手総合商社5社が昨年より順位を上げた。

 大学生の志望企業上位5社
 (カッコ内は前年順位)

 1 (2)  ソニー
 2 (5)  三菱商事
 3 (1)  三菱東京UFJ銀行
 4 (18) 三井物産
 5 (6)  NTTドコモ

 首位のソニーは昨年の2位から盛り返した。製品を通じた知名度が寄与したものと思われる。

 2位は昨年5位の三菱商事、昨年18位だった三井物産も4位に浮上した。丸紅 (6位)、伊藤忠商事 (13位)、住友商事(20位)の各社が20位以内に入った。

 環境関連やバイオなど、資源以外の成長分野に学生は注目しているとのこと。理系学生の志望企業ランキングでも昨年81位の三井物産が5位に上昇している。

 商社人気の背景にはきめ細かい採用活動もある。一部の商社は担当者が主要大学に出向いて学生との交流会を開くなど、会社説明会以外に情報発信の機会を増している。

 三菱商事は東京・丸の内本社に学生を招く交流会を実施しており、今年度も公募した4600人の学生を11〜3月に57回に分けて招待する。

 中堅社員1人が学生10人程度を受け持ち、商社でどんな仕事ができるのか対話形式でしってもらう試みのようだ。

                  (引用: 日本経済新聞)

 
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2009年12月31日

総合商社の機能と組織 (6) 川上・川中・川下とは

 川上・川中・川下とは

 商社でよく聞く言葉に川上・川中・川下というものがある。
一般的に言うと、原料→製品→販売までの一連の過程を川の流れにたとえ、川上が原料、川中が製品、川下が販売を指す。

 商社は取引パートナーとすべての分野で接触を持ち、輸入により原料をメーカーに調達し、できあがった製品を国内取引、海外輸出、三国間貿易(=日本を介さない外国間取引)などの取引形態で販売をしてきた。

 しかし、メーカーの成長とともにメーカーの自立などで商社外しの恐れが出てきたため、単なる仲介取引だけでは存在意義がなくなってきた。このため、商社は川上から川中、川下まで一連のバリューチェーンを築いて、モノの製造から流通に至るまでの全ての過程に商権を確保し、幅広い分野から利益を稼ぐスキームに変わってきた。

 鉄鋼では、三井物産がオーストラリアの鉄鉱石事業に投資し、自ら権益を押さえて鉄鉱石を確保し、三菱商事も同様にオーストラリアの高品質の原料炭事業に巨額の投資を行い、権益を確保した。資源そのものを押さえることで、鉄鋼メーカーに対する存在感を高めることが出来たほか(=取引の相対優位性)、これら投資先からの事業収益が連結業績に大きく寄与するようになった。

 その一方で、鉄鋼製品の川下分野では、中国やアジアの旺盛な需要をねらい、コイルセンター網を拡充して、現地に進出した自動車、家電メーカー向けにスリット、プレスなどの加工を加え、部品に近い形にして供給する事業を展開している。すなわちユーザーのかゆい背中にまで手を伸ばして、そのニーズに応えている。

 商社はこのように幅広く川上、川中、川下までの商流を一挙に手掛けることによって、従来のビジネスには存在すらしなかったバリューチェーンを築くことが出来るわけである。

 そして、そのバリューチェーンを構築することで商社はあらたに収益源を創出することが出来る。まさに、 ”無から有を産む” わけである。ここが世界中に例を見ない日本独自の総合商社の希少価値である。

 また、同時に周辺ビジネスを強化することもできる。

 同様の展開は下記の図のように多岐にわたる分野で行われているが、自動車を見ると川上での部品関連取引では、海外の製造工場向けにジャストインタイムで部品を供給している。

 さらに川下分野では、輸入卸事業 (ディストリビューター)から、ディーラー事業、販売金融事業 (オートローン) やカー用品、アフターサービス事業などの周辺分野を厚くすることで手広く収益の機会を拡げている。

 1. 川上分野
    A. 自動車
  自動車部品製造 エンジン、鋼材、合成樹脂

    B. 繊維
  繊維原料生産  糸、綿、織物、合織

    C. 鉄鋼
  鉄鋼原料生産  鉄鉱石、原料炭、添加剤

    D. 紙製品
  製紙原料製造  チップ、チップパルプ、古紙

 2. 川中分野
    A. 自動車 自動車製造

    B. 繊維  衣料品裁縫

    C. 鉄鋼  製鉄

    D. 紙製品 製紙

 3. 川下分野
    A. 自動車 
      輸入卸、ディーラー、オートローン、カー用品販売

    B. 繊維
      問屋、スーパー、百貨店、SPA(製造小売業)

    C. 鉄鋼
      指定商社、鉄鋼問屋、コイルセンター

    D. 紙製品
      問屋、販売事業
 
            (引用:日本実業出版社、よくわかる商社)
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2009年12月27日

総合商社の機能と組織 (5)

人事制度 − 背番号制度、人材育成制度

 「ラーメンから人工衛星まで」 扱うと言われる総合商社は、事業部の数は多いは、子会社、関連会社の数は多いは、海外拠点の数は多いはで、それこそ ”日本経済の縮図” と表現しても良いくらいの小宇宙を会社一つで創り上げている。

 この地理的にも取扱い品目的にも幅の広い総合商社がありとあらゆることに挑戦するため、そこに横の事業展開の可能性やシナジー効果が商事、あらたな物流ネットワークの構築や、商社金融機能など、品目や事業目的を超えた包括力が生まれる。そこが総合商社の強みである。

 世界のビッグビジネスには欧米で業界を寡占する排他的事業集団がある。
たとえば会計の分野ではKPMGやプライスウォーターハウスを中心としたビッグシックス。
 穀物取引の世界ではカーギルを筆頭とする穀物メジャー。
 石油ビジネスの世界ではエクソンモービルやBPを中心としたセブンシスターズ。
 これらの排他的な世界に、いくら独立系の新興企業が臨もうとして厚い壁にはばまれる。

 そんな世界の各種メジャーに単独で挑む実力を持っているのは日本の総合商社くらいのものである。

 穀物メジャーの主戦場である北米や南米に穀物取引ネットワークやインフラを着々と作っている丸紅や、石油のビッグシックスに必死で追いつこうと権益を買い増していく三井物産、三菱商事、丸紅と、総合商社の活躍の領域は日本から世界へとどんどん比重を増している。

 その総合商社の組織面にこれからはフォーカスを当てていきたい。

 商社における背番号とは、最初に配属された部門のことを指し、部門への帰属意識を高め、社員のやる気とプライドを情勢する効果を持つ。

 大手商社では、 「あの人の背番号は繊維だよ」 といった具合に、商社マンの話題になると背番号と言う業界用語が頻繁に出てくる。

 新入社員は、どこに配属されるかで、その後の会社人生が大きく左右されると言っても過言ではなく、配属前には多くの商社で希望配属先を人事部に申請することが出来る。しかし、一般的には営業部門とコーポレート部門で欲している人材と、人事部が持っている個々人の適性の情報などをすりあわせて配属先が決められるので、本人の希望は参考程度に留まっているようである。

 業績が好調な営業部門は、新入社員の人件費を賄えるだけの資金力があるため、多くの新人を採用できるが、不振部門や弱小部門にはそのゆとりが無く、ここ数年新人を採用していないという部署もあるそうだ。ゆえに、有力部門には優秀な人材が多数集まり、益々強くなる傾向があるようだ。

 − 商社の人材育成制度 −

 商社の人材育成には、キャリア・デベロップメント・プログラム(CDP) 制度と呼ばれるものがあるが、これは一定期間内に出身部門以外の部署での業務を最低3カ月経験させるという制度である。

 たとえば、優秀な営業部門の若手エース社員の場合、CDP制度の一環で、コーポレート部門で会社の経営戦略の企画立案を行う経営企画部に2〜3年契約で異動するケースが散見され、そこでは他の営業部門のエースもおり、鉄鋼部門出身、エネルギー部門出身という背番号はそれぞれのエース社員のアイデンティティを示す箔となる。経営企画部で経営の王道を学び、営業部門に戻った時には、経営についての知見や経験が現場の部門経営に活かされることになる。

 一方、海外駐在の場合も同様に、さまざまな営業部門出身の駐在員がおり、基本的には各自は背番号のある営業部門の業務を現地で行う。しかし、小規模店で駐在員が数人しかいない事務所などは、繊維出身の人が鉄鋼など他の商品も担当するケースも多々あるようである。

 背番号制度は、本人の帰属意識を高め、本人のやる気とプライドを醸成する効果があるが、l逆にその業務に適性がない人は不幸である。こうした人材の適材適所を図る施策として、 「社内公募制」 のような制度を導入している商社もある。

 この制度は、部門が全社に向けて人材を公募する制度で、応募者は陣自分の配慮で上司に知られずに面接を受けることが可能で、採用が決まればその部門に背番号を移すことが出来る。柔軟性を取り入れた人事制度である。

 

 
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2009年12月09日

総合商社の機能と組織 (4)

 口銭と商圏について

 1. 口銭とは何か?

 商社がメーカーの製品を販売して得る手数料を「口銭」と呼びます。
手数料はコミッション、フィー、インセンティブ等、さまざまな呼称で呼ばれますが、商社の場合には鉄鋼や自動車などの従来型産業分野が多いため、口銭と呼ばれます。

 これがトレードビジネスにおける収益の源泉であり、かつては売上高の拡大により口銭収入を伸ばすのが商社の目標でした。

 口銭は内口銭と外口銭に大きく分けられます。
内口銭とは、たとえば金属メーカーなどと事前にトン当たり何%といったように口銭率が決められているものです。従って、販売数量が減少しても金属価格が上がれば商社の口銭収入も増加する可能性があり、逆に販売数量を伸ばしても単価が下がれば減少することもあり得ます。

 ちなみに2004年度の鉄鋼業界は、旺盛な中国需要を背景に、国内の鉄鋼メーカーがフル稼働しても鋼材が足らない状況となり、鋼材単価が大幅に上昇しました。このため、商社の国内鉄鋼販売は、数量的には供給がひっ迫していたために若干増にとどまったにも関わらず、鋼材価格上昇の恩恵にふくし、口銭収入を大幅に増やしました。

 外口銭とは、仕入れ値に手数料を上乗せしたものです。通常は、いくらで買うという売り先を見つけたうえで、仕入れるケースが多く見られます。一般的な商取引により近いと言えるでしょう。

 しかし、鉄鋼分野で鋼材の加工販売を行うコイルセンターなどは、鋼材を仕入れて在庫し、裁断加工などで付加価値を高めてから販売するので、仕入れ値に高い外口銭を上乗せすることになりますが、市況が下がり鋼材価格が下落すれば損失を被ることもありえます。

 同じく2004年のケースをみますと、前述のように鋼材の供給がひっ迫し価格が上昇したため、商社の国内鋼材販売会社の多くが安く仕入れていた在庫が高く売れ、多大な利益を上げ、金属製品部門の業績を大きく伸ばしました。

 一方で眠り口銭と呼ばれるものもあります。これはメーカーの製品販売で特定ユーザーへの継続的な取引の道筋をつけ、たとえ商社が両社の取引業務の仲介の労をとらなくとも、取引が生ずる都度に口銭が商社に落ちるケースを揶揄したものです。

 2. 商権とは何か。

 商権とはその商売(商社では商内というのが一般的)を優先的あるいは独占的に行える権利です。たとえば欧州の高級ブランドの日本やアジアでの販売権を輸入総代理権として買い、国内販売をするようなケースです。
 一般的には商社がメーカーなどとの古くからの取引関係を通じて、市場や販路拡大で確立してきた商売の流れ(商流)を指すケースが多いです。
            (引用:よくわかる商社、日本実業出版社)
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2009年11月22日

総合商社の機能と組織 (3)

 = 商社で行う4つの取引形態 =

 商社のトレードビジネスにおける基本的な取引形態は、国内取引、輸出取引、輸入取引、外国間取引の4形態である。それぞれについて主要な取扱い商品などを上げると;

 @ 「国内取引」 は、国内で仕入れて国内で販売する取引形態で、鉄鋼メーカーから鋼材の供給を受け、自動車メーカー、造船メーカー、重電機メーカー、家電メーカー向けに販売するほか、国内のマンション販売、建設請負、建設資機材の販売等々があげられる。

 A 「輸出取引」 は、日本経済の成長を担った取引形態だが、円高の影響を大きく受けるのが難点であった。
 輸出の代表的な品目には、自動車および関連部品、各種プラント(重電機プラント、化学プラント、製鉄プラントほか)、精密機械など、日本企業の高い技術力で競争力のある分野が中心である。

 アジアなどのインフラ需要が旺盛な地域は各種プラントの取引が活発で、自動車はアジア向けに自動車部品を分解して輸送し現地で組み立てるノックダウンパーツの輸出や中東向けの完成車輸出などを行う。

 B 「輸入取引」 の主要品目は、鉄鉱石や原料炭などの鉄鋼原料、国内の電力会社向けの原油・LNG(液化天然ガス)・一般炭、中国製衣料品、欧米高級ブランド衣料、原木・製材(米材、ロシア材、南洋材、北欧材等)などで、資源エネルギー関連や素材関連が多い。中国の衣料品については、最近、SPA(製造小売りまでを行う業者)の台頭により、輸入が大幅な増加傾向にあった。

 C 「外国間取引」 三国間取引とも呼ばれ、日本を経由しない外・外の取引形態のことである。アジアから輸入する原料を欧米に輸出したり、または欧米の完成品を中東アフリカ地域やアジアに輸出することで日本を経由しない取引が完結する。

 以上の4つの取引形態は、取引先である買い手と売り手の所在地域が国内か、海外か、という切り口で分類されたが、このほかに取引の手法などを切り口にした取引形態として、仕切取引、代行取引、ひも付き取引などがある。

 「仕切取引」とは、売り先を決めずに商品を仕入れて販売する取引で、市況が上昇すれば利益幅が拡大するが、逆に下落した場合には多大な損失を被るリスクの高い取引である。

 「代行取引」とは、メーカーに代行して行う取引で、口銭率が非常に低い。

 「ひも付き取引」は、出来あがった製品を買い取る条件でメーカーに原材料を供給する取引などである。

                (引用:よくわかる商社、日本実業出版社)

 
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