2015年01月17日

マッキンゼーの知恵 (83)

「 マッキンゼーみたいな会社は明日無くなっても困る人はいない 」
 藤井清孝 ルイ・ヴィトン・ジャパン・カンパニー プレジデント&CEO

  今日は、マッキンゼー出身者のお話を紹介します。マッキンゼーやBCG(ボストン・コンサルティング・グループ)など戦略系経営コンサルの仕事とは、いわば芸術家みたいな仕事であって、他の事業会社や金融とは違うという話です。

 経営コンサルタントに求められるタレントとは、暗記能力に優れた学校秀才タイプではなく、クリエイティブな能力に長けた人材なのかもしれませんね。

 SAPジャパンやルイ・ヴィトン・ジャパンカンパニーのトップを経て現在、ベター・プレイス・ジャパンの社長を務める藤井さんは、新卒でマッキンゼー・アンド・カンパニーに入社したのがキャリアのスタートでした。

 当時は会社名どころかコンサルティング会社という業種もまだ世の中には認知されていませんでした。マッキンゼーも積極的に学卒者を採用していたわけではありません。

 藤井さんは銀行と商社から内定をもらっており、三択肢からマッキンゼーを選択しました。
親からは勘当され、学校の先生からは 「頭がおかしくなったんじゃないか」 と言われたそうです。

 そんな反対を受けながらもマッキンゼーを選んだ理由は、自分が将来こうなりたいと思う人が圧倒的に多かったからでした。

 「 マッキンゼーみたいな仕事は、世の中で明日なくなっても困る人がいない。要するに芸術家なんです。ところが銀行とか商社は、社会にがっちり組み込まれているから、なくなると困る人がいっぱいいる。

 アドバイスだけやってお金をもらうというビジネスモデルは日本にはなかったわけですね。あえてそこに飛び込んで、保証もなくやっている人たちというのは、自分たちで価値をつくっていかないと明日はない世界で生きていたんです。」

 すでに出来上がった枠組みの中で仕事をするより自分たちで価値をつくる、これから枠組みをつくるという世界で生きている人たちに魅力を感じ、藤井さんはコンサルティングの世界に飛び込みました。

 あらかじめ社会に組み込まれた枠組みの中で、定型的な仕事をするほうが得意という人もいます。ただ、現在は既存の枠組みそのものが不安定になってきています。かつては大企業はつぶれないという信仰めいたものがありましたが、今はありませんし、リストラもあります。

バブル崩壊以降、事業環境の変化や経営判断の誤りで淘汰されていく企業を私たちは多く見てきましたが、そのような時代においては会社名や肩書よりも、具体的な仕事の中身と成果の価値が高まるのは必然です。

 自分で価値をつくり、それが自分の価値にフィードバックされ、よりよい仕事につながる好循環を自分でつくり出していくことが大切です。

 【 引用: 社長という仕事 Road to CEO 】


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2014年12月21日

マッキンゼーの知恵 (82)

 電通からスイスのローザンヌ大学でMBA(経営学修士)取得、そしてマッキンゼーに入社し、外資系メーカーのCEOに就いた谷貝淳氏の著書からマッキンゼーの仕事のしかたを紹介します。

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 “マッキンゼーで学んだ2つの重要なこと (2) ” 
 「効果的意思決定のプロセス」


 会社の中で、ほとんど付加価値の高い仕事というのは、何らかの意思決定プロセスを伴うものではないだろうか。

 規程通りにビューロクラティックな(官僚的な)書類を作成するとか、コンピュータに数字をインプットするなどといった業務にはあまり関係ないが、どのようなターゲットに対して商売をすべきか、どんな商売を開発すべきか、製造は自社で行うべきか、調達先はどこにするか、などほとんどの部門領域において意思決定は日々行われている。 

 また、私生活の中でも意思決定は毎日行われているはずである。どの会社に勤めていようか、誰と結婚しようか、といった人生の重大な問題から、どこに飲みに行こうか、といった身近な事柄まで、我々は毎日何らかの意思決定をしながら生活しているのではないだろうか。

 こういった意思決定をする場合、大抵の人は無意識にあるプロセスに沿って意思決定を行っているはずである。

 しかし、このプロセスを意識している人はあまりいないのではないだろうか。世の中、もちろん誰にも未来のことなど分からないわけなので、どんなに優れた意思決定プロセスを経て何かを決定したとしても、失敗したり外れたりする可能性が大いにあるということは否めない。

 しかし、ある一定の意思決定プロセスを理解、認識することによって、正しい決断をする確率を高めることができるのではないだろうか。

 私は、企業人はもちろん正しい結果や成果を求められるべきだと思うが、それ以上に本質的には正しい意思決定をしているかが求められているのではないかと考える。

 常に裏目に出ることのない、正しい決定をするということは不可能である。誰も将来の不測の事態など正確に予測することなどできないはずだからである。

 大企業のトップや識者といわれる人たちが、リーマンショックやギリシャショック、アジア経済危機を予測できず、株やデリバティブで大きな損失を被ったのは決して彼らが無能だったからではないはずだ。

 無責任なようだが、このような不測の事態によって自分の決定が裏目に出てしまうということはある程度仕方がないのではないか。会社での意思決定というものは、その時点で入手できる最大限の情報をもととに、最も適切な判断をしたのかということが問われるべきである。

 ここでは、マッキンゼーで学んだ効率的意思決定プロセスについて述べる。

 “ 意思決定における”第1プロセス 「意思決定事項の明確化」 “

 まず初めに重要なことは、何に関して意思決定を行うのかということを明確にすることである。これは一見当たり前のことであるが、実は多くの場合、決定すべき事柄が明らかになっていなかったり、的を外していることがある。

 例えば部員皆で社員旅行の行き先を決定するための議論をしている状況を考えてみよう。なぜかなかなか意見が出て来ず、行き先が決まらない。しかしもし、多くの部員たちがそもそも社員旅行に行きたがっていないという場合には、いきなり旅行の行き先を決めようとしても無理がある。

 この場合は、 「社員旅行の行き先」 ではなく、まず 「社員旅行を実施すべきか」 の決定を先に議論すべきである。このように、決定すべき事柄をとり違えた議論は、結局皆の時間を犠牲にすることが多い。

 “ 意思決定における第2プロセス 「思考のフレーム設定」 ”

 何を意思決定しようとすることが明らかになったら、次はどのような範囲の中で思考、決定を行う自由度があるのかを明確にする。たとえばあなたが某商品事業部の事業部長だったとする。

 その商品事業部の販売を拡大するには今、何を行うべきかという決定をする場合、新商品を開発するとか、広告戦略を見直す、または価格を変更するなどのレバーに加えて、販売人員増強のために、そもそも社外から有能な社員を採用する自由度があなたにあるのか、営業マンのヤル気を高めるために成功報酬の比率を高めることができるのかなど、どのような 「フレーム」 の中で意思決定を行う自由度があなたにあるのかによって取るべき方法が違う。

 よく陥りがちな失敗は、最初につい範囲のフレームを設定してしまうことである。この時点で狭く枠組みを設定してしまうと、以後、この狭いフレームの範囲の中からしか解決策を考えることができなくなってしまう。

 より有効な解決策が生み出されるま可能性を殺してしまうリスクがあるのである。なるべくはじめから色々なことを無理だと考えず、幅広いフレームを考えることが有効な解決策を導き出すコツである。

 “ 意思決定における第3プロセス 「選択肢の列挙」 ”

 さて、いったん枠組みを設定したら、その中にどのような選択肢があるのかを列挙する。たとえば、製薬会社が新規事業への進出を考えるとき、 「人々の健康に関する事業領域で今後成長が望めるもの」 というフレームの中にどのような選択肢があるのかを列挙する場合を見てみよう。

 調剤薬局事業、ドラッグチェーン事業、高齢者・慢性病疾患患者向け健康食品宅配事業、エステティック事業など、挙げて行ったらきりがない。この時点ではなるべく多くの選択肢を挙げることが大切である。

 “ 意思決定における第4プロセス 「評価軸の設定」 ”

 さて、今度は第3プロセスに列挙したオプションを、どのような判断基準で評価していくべきかという 「評価軸」 の設定をする必要がある。製薬会社の例をとると、列挙した新規事業を評価する軸として、
「市場全体の成長率、利益率、競合の激しさ、参入の難易度、自社の強み、事業リスク」 などがあげられる。

 これは、あまり多く挙げても意味がない。重要と思われるものに絞って5つないし6つくらいを挙げるのが望ましい。そして、当然それぞれの評価軸は重みが違うはずなので、特にどの評価軸を重要視すべきかを明確化する。

 つまり、それぞれの評価軸を 「加重」 するのである。

 “ 意思決定における第5プロセス 「評価」 ”

 いよいよ、個別の評価である。これは通常、縦横の票を作成して行うとやりやすい。まず表の左側に選択肢を上から下に並べ、表の上部に評価項目を左から右に並べる。そして、あとはそれぞれのますに評価結果を記入していくのである。

 市場規模や利益率など定量的な分析により導き出せるものはまず実際のシミュレーションを行う。また、事業リスクや自社の強みなど定量的な数字をはじくことが難しいものに関しては、可能な限り論理的な思考について評価を数値化する。

 たとえば5段階で評価結果を記入するとすると、調剤薬局という選択肢は市場全体の成長率は4、利益率は3、競合の激しさは2、といったぐあいにマス目を埋めていく。

 そして、全てのマス目が埋め終わったら、先ほど決めた加重点をかけるのである。市場の成長率は4だったが、加重点が10%の場合、加重後は0.4となる。今回の新規事業は特に利益率を重視した結果、利益率加重点が30%だったとすると、利益率の最終評価点は過重後0.9となる。

 そしてそれぞれの選択肢の一番右に、加重後の各評価点の合計値を記入する。

 “ 意思決定における第6プロセス 「判断」 ”

 過重後の合計評価点でそれぞれの選択肢の優劣を判断するわけだが、ここで大切なのは最も高い評価点を得た選択肢にすぐさま自動的に決定するのではなく、今一度その評価結果が本当に妥当なものかを再度 「考える」 ことである。

 なぜなら、もしかするとプロセスの途中の過重配分などの偏りがあったかもしれず、集計結果にひずみが生じているかもしれないからである。

 やはり最終的には評価結果が自分の感覚にマッチしているか、自分に対して説得力を持つかといったことを再度検討すべきである。そして、しっくりくるという確信が持てた場合、決定する。もししっくりこない場合には、再度前のプロセスを見直してみるべきである。

 もしかしたら、選択肢が少なかったのかもしれないし、加重点が適切でなかったのかもしれない。この最後の 「考える」 というプロセスにおいては、事業における勘とか、センスが要求される。恐らく名経営者といわれるような人は、この部分の能力が特に優れているのであろう。

 “意思決定における第7プロセス 「実行」”

 最も重要なポイントである。決定したことは責任を持ってすみやかに実行する。当たり前のことのようだが、これができない会社をいくつも見てきた。

 意思決定者に危機感が乏しかったり、強いリーダーシップがなかったりした場合に起こりがちな失敗である。しかし一般的には、その決定事項を自分がしっかりとした意思決定プロセスに沿って導き出した場合、自分の意志決定にかなりの自信をもてるはずである。

 反対意見に直面した場合でも、自分はこういう論理的根拠に基づいてこの決定をしたと相手に明確に説明ができるようになる。相手が自分以上に説明力のある論理的根拠を示せなければ、あなたの意見の方が説得力をもつはずである。

 (つづく)

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 【 引用: ゼロからめざせ! 30代CEO 】
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2014年12月05日

マッキンゼーの知恵 (81)

【 連載記事は下記のカテゴリー欄から通してご覧になれます 】

 電通からスイスのローザンヌ大学でMBA(経営学修士)取得、そしてマッキンゼーに入社し、外資系メーカーのCEOに就いた谷貝淳氏の著書からマッキンゼーの仕事のしかたを紹介します。

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マッキンゼーで学んだ2つの重要なこと (1)

 “OSの重要性”

 実は前述した6C分析やマーケティングの4つのP、またはビジネス・システムといった考え方はほとんどのビジネススクールで学ぶことはできる。ここではいくつか、マッキンゼーで学んだり体得したことで非常に役立ったことを紹介する。

 マッキンゼーのコンサルタントという立場は、毎日想像を絶するようなプレッシャーをクライアントから受ける。通常、マッキンゼーの請求するコンサルティングフィーは、コンサルタント一人あたりに換算すると 「1日?万円」 となる。

 つまり私が存在するだけで毎日 「?万円」 の支払いがクライアントに生じているわけである。当然、クライアントは 「今日、このコンサルタントは?万円の価値のある発言、提言をわが社にしてくれたのか?」 という厳しい眼で我々を見るわけである。

 これはすごいプレッシャーである。見当違いの発言などしてしまったら、それこそ集中砲火のように攻撃を受けることになるのだ。だからこそ、マッキンゼーのコンサルタント達はがむしゃらに努力をするのである。

 先述した「効率性の追求」 と 「集中力の管理」 を意識しつつも、毎日15時間以上は働く。私の場合も、マッキンゼー在籍中の3年間、誇張ではなくほとんど毎日朝9時から深夜12時まで働いていた。

 もちろん、お茶を飲むなどのリラックスしている時間などほとんど無く、常にクライアントからの “お手並み拝見” といった厳しい視線、およびマッキンゼーのパートナーたちから実力を値踏みされるような観察眼にさらされながら、気の抜けない状態での長時間労働である。

 それでも間に合わなくて週末もたいてい1日は資料分析などに費やしていた。まさに仕事漬けの3年間であった。MBA(経営大学院)での厳しさよりも、マッキンゼーでの生活は、それとは比較にならないくらいに厳しかった。

 そもそもMBAの学生という立場は、こちらが授業料を払っているという、いわばお客である。客である限り、最後には甘えが許される余地もある。また、すべてのケース・スタディは机上の空論か、過去の事例であり、それによって実際に企業が倒産したり、誰かが解雇されることはない。

 これに対してマッキンゼーのコンサルタントという立場は向こうが客である。もちろん高額のコンサルティングフィーを払うクライアントは客であるし、マッキンゼー自体も私というコンサルタントに給料を払ってくれている客である。

 当然、期待されている働きをしないとかなり厳しいプレッシャーを受けることになる。クライアントからは、仕事の発注を止めるというプレッシャーを受け、マッキンゼーからは、前述の “Up or Out (昇格か解雇か)” というプレッシャーを常に受けることになる。

 また、仕事の内容自体も、机の上の空論ではなく、実際の企業の命運がかかっているのである。もちろん、クライアントもマッキンゼーの提言を常に100%無条件で実行するわけではないが、我々の提言一つでクライアント企業が赤字に陥ったり、多くの社員が職を失うリスクを常にはらんでいるわけである。

 このことは、我々一人一人のコンサルタントに大きなプレッシャーを与えることになる。

  “知識よりも知恵で勝負”

 このようなプレッシャーの中で、私はマッキンゼー入社後、クライアントに対して自分の考えをなかなか自信をもってぶつけることができなかった。自分の提言に自信がもてなかったからである。

 何しろ相手はその業界一筋に30年以上過ごしてきたベテラン役員達である。それに比べてこちらは全くの門外漢で、その業界についてはプロジェクトチーム結成後たった1〜2か月かじっただけである。

 いくら週7日、一日15時間以上労働し、業界知識を吸収しようと努力しても、当然、業界知識では相手にかなわない。そんな自分が相手に対していったいどのような 「価値」 のある提言をすることができるというのか。

 自分の考えに自信を持てなければ、当然自分の発言に迫力も生まれず、クライアントに論破されることもしばしばで、最初の頃は大いに悩んだ。しかし、そのうち徐々に 「経営戦略コンサルタント」 の意味が分かってきた。

 マッキンゼーは 「経営戦略コンサルティング・ファーム」 であり、「専門コンサルティング・ファーム」 ではないのである。

  専門コンサルティングとは、例えばスーパーマーケットの棚を一目見ただけで売れ行き不振の原因を指摘でき、棚の並べ替えの改善案を提案できる流通コンサルタントとか、工場の製造ラインを見ただけで、より効率の良いライン設計やさらなるコスト改善を提言できるオペレーションコンサルタントのような存在のことである。

 ある一つの専門分野のスペシャリストのことである。これはいわば、コンピュータの世界でいえば、応用(アプリケーション)ソフト的な機能である。その分野で長年にわたる知識・経験がものをいう職人的世界である。

 一方、経営戦略コンサルティングとは、 「企業経営における基本的な考え方」 で勝負する世界である。コンピュータでいえばOS (基本ソフト) 的な機能である。

 日本ではまだ稀だが、米国では企業のトップ (CEO) がいきなり社外からヘッドハントされてやってくる場合が多い。当然、その業界の外から招かれたCEOは、個別部門の専門的な知識をもっていないのがふつうである。

 しかし、それでもこういうことが頻繁に行われ、またこのようなCEOに高額の報酬が支払われる理由は、米国の企業社会が企業の経営スキルと個別現場のオペレーションスキルとを切り離して考えているからである。

  (つづく)

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 【 引用: ゼロからめざせ! 30代CEO 】


  【 東洋経済 マッキンゼー学校 最強メソッド&全人脈 】


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2014年10月29日

マッキンゼーの知恵 (80)

 電通からスイスのローザンヌ大学でMBA(経営学修士)取得、そしてマッキンゼーに入社し、外資系メーカーのCEOに就いた谷貝淳氏の著書からマッキンゼーの仕事のしかたを紹介します。

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 プロジェクトチーム単位での活動 

 マッキンゼーのコンサルティングは通常プロジェクト (マッキンゼーではEngagement と呼んでいる) ごとにチームが編成され、大体3か月から6か月かけて1つのプロジェクトが進行する。

 1つのチームは通常、パートナーが1人ないし2人上につき、現場をレベルでは1人のEMないしSEMが指揮し、その下にアソシエイトが 2〜3 人つくというのが一般的なフォームだ。

 プロジェクトの内容は千差万別で、例えば 「どうしたら自社の株価を高めることができるか」 とか、 「ROE (Return On Equity: 株価収益率) を改善するには」 といった企業の全社戦略や経営の根幹に関わる課題から、 「R&D部門(研究開発部門)の効率改善」 とか、「営業マンの活性化」 といった固有の部門レベルの課題にまで多岐にわたる。

 クライアントの依頼主は社長自らといった場合がほとんどで、通常は社長直結の特別プロジェクトチームがクライアント社内に結成され、日常の分析作業はこのプロジェクトチームと共に行うことが多い。

 そして、プロジェクトの途中報告及び最終報告時にクライアントの役員会でプレゼンテーションを実施する。この時にクライアントの社長以下、役員たちと激しい議論を展開し、実際の実行に向けた合意を取り付けるのである。

 “ 売上げ − コスト=利益という基本”


 入社後、約1か月間の基礎研修期間を経て、最初のプロジェクトに配属された。クライアントは巨大な重厚長大産業で、最近の規制緩和と外資の進出によって利益を落としており、現在の事業の仕組み全体を見直すことによって、より利益の出る筋肉質の体質への転換をめざしていた。

 マッキンゼーへの依頼内容は、「そのためにはどうしたら良いか?」 という、かなり広い領域にわたるものだった。守秘義務があるため、詳細は語れないが、基本的な考え方だけ紹介する。

 通常、まず依頼主企業を取り巻く環境を分析することからプロジェクトを始める。コンサルタント自身、その業界に全くの門外漢だった場合、この分析課程は不可欠である。

これは俗に言う6C分析というもので、まず @依頼主企業 (Company) の強みや弱みは何か、
A どこで利益を稼いでいるのか、 B社風や社員の意識はどのような状態か、 C大きな比重を占めるコスト要因は何かなどを詳しく調べ、依頼主企業をよく理解する。

 そして、D 業界の競合他社 (Competitors) の戦略、動向、および強みや弱みは何か、
E顧客 (Customer) のニーズの変化、購買に当たっての意思決定者や判断基準の詳細などを調査分析する。

また、F 最終的に商品を購買することになる消費者(Consumer) の嗜好やブランド選定基準などの動向、
G アライアンスなどを形成している提携会社や卸などの協力社 (Cooperator) の力量分析、そして、 

H 政府の影響力の強い規制産業の場合には、将来の事業の方向性に大きな影響を与える政策 (Controller) の見極めなどを行う。

 こうしてまずクライアント企業を取り巻く現状を徹底的に理解、整理して頭に叩き込む。

 そしてこの6C分析で明らかになった事実をもとに、実際に取るべき利益増大戦略の方向性を作っていくわけである。これも単純化して述べるが、基本的には企業の生み出す利益総額とは 「売上 − コスト」 のことである。

 ということは、ある企業の利益を増大させるためには売り上げを増やすか、コストを削減するか、またはその両方を実現することが必要となってくる。

では、売上を増大させるには何が必要か? 3つある。

 @ だれに対して自社製品を売るのかという、ターゲットの設定。国内をターゲットとするのか、それとも地方の中小都市も含んで全国展開をするのか、という商圏の設定。また、ある特定の年齢層や性別等の人口統計上の特性でターゲットを捉えるのか、といったコアターゲット像の絞り込み。

 A このターゲットに対してどのようなマーケティング施策が最も有効かを明らかにする。この場合有効なのが4Pの考え方だ。

 これはマーケティングの教科書の1ページ目に出てくる基本の事柄だ。まず、そのターゲットに対してどのような特徴の商品 (Product) を開発、提供すべきか。6C分析で明らかになった顧客や消費者の嗜好動向や、競合他社の商品情報などから作成した商品マップなどをもとに、市場のスイート・スポットを狙い撃ちできる商品を絞り出す。

 また、ターゲットに受け入れられる価格 (Price) はどのくらいか。ブランドイメージに対する影響などを考慮しながら、価格と販売量のシミュレーションを行い、利益の最大化をめざす。そして、ターゲットにどのチャネル・流通網 (Place) を使って商品を流すか。

 高級店に絞るのか、それとも販売量をかせぐために一般量販店にまで販路を広げるべきか。自社で販売すべきか、または代理店に販売委託すべきか。また、どのような広告販促戦略 (Promotion) が有効か。テレビなどのマス広告を中心に展開すべきか、または店頭販促などの売り場重視戦略をとるべきか。

 この4つのPである商品戦略、価格戦略、流通戦略、広告販促戦略を決定した後、3つめに必要なこととして営業組織の活性化が求められる。どんなにすばらしいマーケティング戦略を構築したところで、実際に顧客に対して日々、商品を売り込む営業マン達がうまく動いていなければ商品は売れない。

 営業組織を担当地域でくくるべきか、担当商品でくくるべきか。営業マン達は商品ごとの利益や顧客ごとの利益を理解して、優先順位を付けて行動しているのか。

 一人のノウハウや成功事例が、他の営業マン達に伝わるしくみはあるか。営業マンの固定給と成功報酬との比率をどのくらいにすることが最も営業マンのヤル気を引き出すことができるか、などを考慮する必要がある。

 B 次に、コストを削減するためにはどのような考え方をすべきかを見ていこう。ただ、単に損益計算書の費用項目詳細を睨んでいても、なかなかコストの実像は見えてこないものである。

 一般的に有効な方法としては、企業のビジネス・システムに沿って個別にコストを分析していくことが考えられる。ビジネス・システムとは企業が商品を市場に送り出すために行っている数々の機能を順番に並べたものである。

 例えばまずR&D部門が研究開発を行ない、調達部門が必要な部品を調達し、製造部門が実際の商品を作る。完成した商品は物流部門が市場に送り出し、マーケティング部門が販売戦略を練り、営業部門が実際に顧客に売り込む。

 そして、この一連の流れを支えているのが、人事部門、経理部門、総務部門、情報システム部門、法務部門などである。これらの個別部門ごとにコスト構造を見ていくのである。

 それぞれの分野で優れたコスト効率を実現している他社の実績数字などをもとにベンチマークしたり、従業員一人当たりの生産性などの指標をもとに分析していく。

 特に、それぞれの部門のコスト項目のうち、大きな比重を占めているものから見ていくことが重要である。改善した場合の効果が大きいからである。

 C そして、コスト改善は必ず数値化した目標値を設定することが大切である。 「X年間でY%のコストを削減する」 とか、「業界トップ企業のコストをZ%下回る」 といったものである。
 
 もちろん、必要なら現在のビジネス・システムの流れを変えることによって、よりドラスティックなコスト改革を実現することも考えられる。例えばある機能をそっくりアウトソースしてしまうといったエンジニアリング的発想である。

 非常に単純化して述べているが、とにかく売上を増やし、コストを削減することが利益改善の基本なのである。

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 (引用: ゼロからめざせ! 30代CEO )



 (東洋経済 マッキンゼー学校 最強メソッドと全人脈!)


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2014年10月11日

マッキンゼーの知恵 (79)


 電通からスイスのローザンヌ大学でMBA(経営学修士)取得、そしてマッキンゼーに入社し、外資系メーカーのCEOに就いた谷貝淳氏の著書からマッキンゼーの仕事のしかたを紹介します。

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 “経営士官学校としてのマッキンゼー Up or Out? 昇格か、クビか”

 1995年初め、私はマッキンゼーアンドカンパニーの東京支社にアソシエイトとして入社した。出社第一日目、まず簡単な入社手続きと総務的事項の説明を受けたあと、自分のデスクのある部屋に案内された。

 その部屋には私を含んで6人のコンサルタント達のデスクがあった。とりあえず同質のコンサルタント達に自己紹介をしていると、そのうちの一人が黙々と自分の荷物を段ボールに詰め込んでいるのに気付いた。

 部屋を変わるのかと聞くと、彼は、許容期間中に昇格できなかったために本日付でクビになったのだという。

 私が間を丸くして言葉を失っていると、「 あなたは採用説明のときに Up or Out 制度について聞いていなかったんですか?」 と聞く。初めての言葉だったので、 「なんですか、それ?」 と聞き返すと、彼は丁寧に説明してくれた。

 マッキンゼーには世界中のオフィスで共通の資格というか職階のようなものがあり、大学を卒業して新卒で入るものはまずBA (Business Analyst) からスタートする。そして次がJA (Junior Associate)。私のように実務経験を積んでMBAを取ってから入社する者は、その上のAssociate という資格からスタートする。

 そしてAssociateの上にはEM (Engagement Manager) 、 SEM (Senior Engagement Manager) と続き、その上に役員であるパートナー (Partner) が存在する。

 しかし、これらの資格には全て許容される滞留期間が設けられており、その期間を過ぎても次の資格に昇格できなければクビになる仕組みになっているということであった。

 昇格するか、クビか、つまり、まさに Up or Out である。彼は私と同じようにMBAを取得してアソシエイトとして入ってきたのだが、EMに昇格できないまま約4年の月日が経ってしまい、クビになったのだそうだ。

 大体目安としてアソシエイトは3年半から4年、EMは2年から2年半、SEMは1年半から2年というのが許容される滞留期間だからだそうだ。つまり、新しい職位を得た瞬間から砂時計がひっくり返り、砂が刻一刻と下に落ちていくのだそうだ。

 砂が全部下に落ちないうちに昇格して、砂時計を再度ひっくり返す必要がある。それも上の資格になればなるほど、砂時計が小さくなってくるというわけだ。何とも厳しい制度である。

“「効率性」と「集中力」を常に意識する”

  この Up or Out 制度は、一般的日本企業のぬるま湯的居心地の良さから比較すると、とても厳しい制度のように聞こえるが、私自身は今から思うと、この制度でとても良い経験をしたと考えている。

 しかし、この Up or Out制度は、よほどの呑気な人間でない限り自分自身に最大限の努力を課さざるをえない状態に自分を追いこむ効果がある。毎日、一分一秒たりとも時間を無駄にせず、自分を高めることに努力をせざるをえないのだ。

 何しろ、毎日砂時計の砂が落ちていく音が聞こえているのだから。そうなると、人間がんばれるものである。高度な仕事遂行能力が身につくようになるために、最大限の努力をするようになる。もちろん、一生このような環境に身をおいていては心身ともに疲弊してしまうが、人生のある一時期に自分を極限状態に追い込むくらいの努力をする期間があるということは、その後の人生にとって良いことだと思う。

 一度、自分がどこまで頑張れるかの限界を経験すると、以降ちょっとやそっとの苦労や努力など朝飯前に感じることができるからである。大きな自信がつくのである。

 ただ、がむしゃらに努力すれば良いというものではない。2つのことを常に意識しながら努力をする必要があると考える。

@ 可能な限り仕事の効率性を追求する意識を持つことである。

新しい業界の知識を吸収したり、何かを分析しようとする時はやみくもに目の前にある資料やデータを読破したり、見当違いの本を読み始めたりしても、無駄な努力となってしまうことが多い。
 
 まず最初に、自分が特に何を知る必要があるのかを明確化する必要がある。ある業界の土地勘を身につけるために広く浅い知識を吸収したいのか、それとも特定の事象、例えばその業界の個々の企業の財務状況や、マーケティング施策の違いを深く知る必要があるのか。

 またはある業界における 「勝利の方程式」 をつかむ必要があるのかなどで、取り組むべき対象も変わってくる。

一般図書を読むのがいいのか、特定レポートなどに目を通すべきか、または、まとまった資料など存在しないので自分で個別データを集めることから始めるべきか、その場合はどのようなデータが必要か、または、何人かの識者に直接インタビューして手っ取り早く要所を吸収すべきか、といった具合にその手法が変わってくる。

 自分が何を知りたいのかが明確化されていないと、見当違いの遠回りな努力をしてしまうリスクが生じてしまう。

 また、これはとても重要なことだが、何を知る必要があるかを明確に理解しているということは、つまり自分の直面している本質的な課題が分かっているということなのである。

 課題とは、自分が取り組んでいる仕事における最も重要なポイント、鍵のことである。無駄な努力をしなくてもすむよう、常に自分の取り組んでいる業務のポイントを的確に把握していることが重要である。そのためには 「木を見て森を見ぬ」 ことにならぬよう、常に広い視野で全体観を持ちながら仕事に取り組むべきである。

A その時々の集中力の度合いに見合った業務をするようにこころがけること。

 同じ能力の人が同じ時間仕事をしたとしても、集中力に違いがあった場合、その結果は大きく変わってくるのである。仕事には密度が大切である。しかし、よほど強靭な体力と精神力を併せ持った人間でない限り、毎日何時間にもわたり高いレベルの集中力を保つのは困難である。

 せいぜい1日のうち、高いレベルで仕事に集中できるのは3時間くらいではないだろうか。それ以外の時間は、かなり集中力が落ちるはずだ。では、私を含めた一般の人間はどうすれば良いのか。最も集中力を発揮できる時間を、最も深く頭を使う仕事にあてることである。

 職種にもよるが、大抵の仕事には頭を深く使うべき性質のものと、作業的なものとが混在しているはずである。付加価値の高い仕事と低い仕事と言い換えたほうが分かりやすいかもしれない。

 例えば、PCにデータをインプットして表計算をするとか、社内書類を作成するとか、または業界関連記事に目を通すといった仕事にはそれほど集中力は求められないはずである。ある程度リラックスした状態でこなせるはずである。

 反対に、一旦頭の中にインプットした業界関連記事やデータの分析結果などをもとに、 「では、どうするべきか」 といった戦略を考えるとき、または社内の色々な部門の現状課題などをもとに社内改革や業務のリエンジニアリング案を考える時などには高い集中力を発揮することが要求される。

 仕事の最も付加価値の高い領域である。1日のうち、最も高い集中力を発揮できる貴重な2〜3時間を、こういった 「深くものを考える」 仕事に費やすべきである。これを逆にしてしまうと、非常に効率が悪くなってしまう。

 せっかく高い集中力を発揮できる貴重な時間を、記事チェックやPCのインプット作業に費やしてしまうなど、何とももったいない話である。その反対に、疲弊した頭で集中力を欠いた状態の時には、深い思考にもとづく良い戦略や提案は生まれてこないものである。

 (引用: ゼロからめざせ30代CEO )
 
 【引用: ゼロからめざせ! 30代CEO − 谷貝淳 箸】
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2014年09月20日

マッキンゼーの知恵 (78)

 “壮絶なマッキンゼーの面接試験”

 電通からスイスのローザンヌ大学でMBA(経営学修士)取得、そしてマッキンゼーに入社し、外資系メーカーのCEOに就いた谷貝淳氏の著書からマッキンゼーの仕事のしかたを紹介します。

 ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ 

 もう季節は10月の終わり、卒業まであと2か月をきっていた。面接の前日にジュネーブからミュンヘンに飛び、マッキンゼーが用意してくれた豪華なホテルに宿泊し、翌日の面接に備えた。

 翌日にはどんよりと寒々しく曇った、ヨーロッパの典型的な晩秋といった感じの日だった。もう既に街路樹は黄色く染まり、道行く人たちは険しい顔をしながらコートの襟を立てて足早に落ち葉の上を急いでいた。

 しかし、面接場所であるマッキンゼーのミュンヘンオフィスに向かうタクシーの中では、初めて訪れたミュンヘンの街並みを楽しむ余裕もなく、私は自分に気合を入れ、うまく面接をこなすイメージトレーニングを繰り返していた。

 ミュンヘンオフィスに到着すると、まず小さな会議室に通された。そして、秘書らしき大柄なドイツ人女性が現れ 「まずは90分間、筆記試験を受けて頂きます。」 と言われた。

 筆記試験があるなんて、事前に聞いておらず、拍子抜けしてしまったが、こうなったらなるようになれと思い、渡された筆記試験に取りかかった。どうやら論理力をみる試験のようだった。

 つい引っかかりそうな、ややこしい問題の数々に取り組んでいると、あっという間に制限時間が過ぎていった。

 私は論理に関してはスイスのビジネススクール、IMDで鍛えられたせいもあり、結構自身があった。それが終わるといよいよ面接だ。

 今度は中背の40代半ばのドイツ人がやってきた。彼はひどいドイツなまりの英語で、現在自分は東京オフィスの支店長をしていると言った。つまり私が入社を目指している東京オフィスのボスである。

 たまたま出張でミュンヘンに来ているのだそうだ。東京オフィスの支社長がドイツ人だったなんて、この時はじめて知った。しかし、もういちいち驚いていられない。

 今度の面接トピックは、 「ドイツのフィルムメーカーが、圧倒的に日本企業が優勢な日本のフィルム市場に進出するためには何が必要か。」 といった問題だった。

 今回は前回のてつは踏まないように、いきなり答えるのではなく、まず色々とこちらから質問をして、状況の理解を深めることにした。そのドイツのフィルムメーカーの強みは何か。

 技術力か、マーケティング力か、コスト競争力か。また、日本のマーケットリーダーは現在の優勢なポジションを何によって獲得したのか。日本の消費者フィルム選択に関する消費者調査の結果はないか、などなど。

 こういった質問をしているうちに、相手の答えの中からいくつか冒頭の質問に対する答えのヒントが見えてきた。私は今回は自信を持って答えられた。結局面接は90分くらいに及んだが、自分なりに手ごたえは感じることができた。

 翌週、案の定2次試験をパスしたという連絡を受けた。とうとう東京での最終面接である。秋も深まった11月の半ば、送ってもらったビジネスクラスの航空券で私は東京へ飛んだ。

 用意してくれたホテルは一流ホテル。まだ採用するかも分からない候補者のためにビジネスクラスのフライトや一流ホテルの宿泊を用意してくれたりと、随分と気前の良い会社だと驚いた。

 面接の前日、成田に到着した。久しぶりの日本である。ヨーロッパの電車に慣れてしまったせいか、東京へ向かう成田エクスプレスのシートがやけに窮屈に感じたことを覚えている。

 その日は、時差ボケ解消のためにホテルのプールでひと泳ぎした後、久しぶりの和食を堪能した。翌週、指定の時間にマッキンゼー東京オフィスに出向いた。いよいよ最終面接である。

 板張りのしゃれた会議室に通されると、早速採用担当者がやってきて、小さな紙に印刷された面接のスケジュール表を渡された。何と驚いたことに、昼食をはさんで計7人の面接官から7時間にわたる面接スケジュールが記載されていた。

 一人当たり1時間の面接が連続7回である。相手の面接官はほとんどが東京オフィスのパートナー(役員)であった。マッキンゼーはこのように社員の採用プロセスに多大な労力をかける。

 コンサルティング会社は人が命だからである。さすがに7時間にもわたる面接には憔悴した。入れ替わり立ち替わりやってくる癖のあるパートナーたちから、意地悪いとんち問答のような質問をぶつけられ、何とか苦労して答えるとその応答にたいしてまた深く突っ込まれるという繰り返しだった。

 答えれば答えるほど逃げ場を失い、追い込まれていくような気がした。夕方、ようやく百人組手のような面接から解放された。へとへとだった。最終面接の結果は翌朝出るとのことだった。

 合格の自信はなかったが、とりあえずやるだけのことはやったという充実感だけは残った。

 翌日、指定の時間に再度マッキンゼーに出向くと、昨日と同じ会議室に通された。やがて、昨日の面接官だったパートナーの一人がやってきた。そしてもったいぶることもなく、いきなり 「谷貝さん、合格です。」 と微笑んだ。

 そして初年度の給与の提示である。合格したということ、そして予想していた以上の給与額の提示に私はもう有頂天であった。小躍りするような足取りでマッキンゼーオフィスをあとにした。

 しかし、後から知ったことだが、私の採用についてはかなりの賛否両論があったそうだ。数人のパートナーが、私がマッキンゼーでは通用しないだろうという判定を下していたそうである。

 結局、いわば補欠のような位置づけで採用されたらしい。たとえ補欠でも入社してしまえばこっちのものだと思いたい一方で、マッキンゼーという組織は、実力不足で入ってしまった者にとっては地獄と化すということを、その時点ではまだ知る由もなかった。

 (つづく)
 
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 【引用: ゼロからめざせ! 30代CEO − 谷貝淳 箸】


【 今日のアルバム 】 ジャズ BOBBY HUTCHERSON − “Happenings”
 
ボビー・ハッチャーソンはロサンゼルス生まれの73歳、ジャズ・ヴィブラフォン奏者。オーソドックスでモダンなジャズ演奏に定評がある。ピアノから音楽に入り、ルト・ジャクソンやマイルス・デイビス、セロニアス・モンク等を聴きジャズに興味を持つようになる。

4曲目の Maiden Voyageは、神秘的な幽玄の世界に導くようなメロディーに、ひとときの安らぎを得られます。You Tube でも聞けます。

http://www.youtube.com/watch?v=nwoTLu2UjjE


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2014年08月21日

マッキンゼーの知恵 (77)

 「壮絶なマッキンゼーの入社試験」

 電通からスイスのローザンヌ大学でMBA(経営学修士)取得、そしてマッキンゼーに入社し、外資系メーカーのCEOに就いた谷貝淳氏の著書からマッキンゼーの仕事のしかたを紹介します。

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 電話の主はマッキンゼー東京オフィスの採用担当者だった。彼はいきなり 「就職先としてマッキンゼーに興味はありませんか」 と尋ねてきた。私は正直言って興味があるもないも、マネジメント・コンサルティングへの就職など考えたことも無かったので、

 「興味なくはないですが・・・」 と、今から考えると非常に情けない返答をしたことを覚えている。すると彼は 「もし良かったら弊社の面接試験を受けてみませんか」 と言ってくれるので、思わず 「はい」 と言ってしまった。

 一人になっていろいろと考えてみた。マッキンゼー東京オフィスということはつまり、面接試験に通ったとしても日本に帰国するということになる。つまりヨーロッパで生きていくという夢は破れてしまうことになる。

 しかし、私は一体何を本当は目指しているのだろうかと再度自問自答した。答えは明らかだ。将来社長に就くことである。電通を辞めるという決心をしたとき、あくまで将来社長に就こうと決意したのである。

 そう考えるとマネジメント・コンサルティングという職種は自分のキャリアデザインにとって最適な通過点に思えてきた。

 MBAを卒業したからといってすぐに社長になれるわけではない。それなら、 「経営代理業」  であるマネジメント・コンサルタントとして社長職の疑似体験を積むことも悪くないのではないかと考えた。

 マッキンゼーの一次面接は、IMDの会議室で行われた。窓からレマン湖沿いの紅葉が覗く、10月のとあるよく晴れた日だった。相手はマッキンゼーチューリヒオフィスのコンサルタント2名であった。

 マッキンゼーのリクルーティングの場合、まずいきなり日本に採用候補者を呼ぶのではなく、候補者の居住地に最も近いオフィスのコンサルタントが1次スクリーニングを行うのが通例である。

 他の企業の面接官と違い、冷たそうな雰囲気の漂った面接官は、今までやってきたこととか志望動機は一切聞かず、いきなり 「 スイスのスキー板の市場はどのくらい大きいか? 」 と尋ねられた。予期せぬ質問だったので、面食らった。正直言って何と答えたか覚えていない。

 その質問が終わると今度は、 「 スイスに乳牛が何頭くらいいるか? 」 である。バカにされているのかとさえ思った。しかし、二人のコンサルタントは大まじめな目で私を見つめていた。

 後年、自分もマッキンゼー在籍中に何回も採用面接官の役割を務めたが、これらの質問は決して相手を茶化しているわけではない。もちろん、いきなり乳牛の数だけを当てずっぽうに答えてもらおうと思っているわけではない。

 ただ、どのような考え方をして答えを導き出そうとするのかという思考のプロセスを見るのである。もちろん決まった答えというものは存在しないが、例えば 

 「スイスは牛乳を輸入していないので、国内で生産される酪農製品に必要な牛乳はすべて自国の乳牛でまかなっているはずである。1年間にスイス国内で生産される飲料乳製品に必要な牛乳はXトン。

 食用乳製品に必要な牛乳はYトン。原料輸出を含むその他乳製品に必用な牛乳はZトンとすると、スイスの乳製品の年間生産に必要な牛乳の総量はX+Y+Zトンである。

 乳牛1頭あたりの年間の牛乳供給量をAトンとし、乳牛のフル生産比率を70%とすると、答えは (X+Y+Z) ÷0.7A となるはずである。つまり、どのような “仮説” を作ることができるかを見るのである。

 一旦しっかりした仮説を作ることができれば、あとは仮説のそれぞれの部分が本当に事実かどうかをひとつひとつ検証していけば良いのである。

 例えば 「スイスは牛乳を輸入していない」 という仮説は事実かどうか、などという具合に。このように最初に仮説をつくることができないと、何かを分析するときにどこから着手してよいか分からなくなってしまい、作業効率が悪くなってしまうものである。

 仮説の設定は問題解決への最短化につながる。もちろん、こういうことは後年知ったことであり、自分がマッキンゼーの1次試験を受けている時にはそのような相手の意図は想像もつかなかった。

 ただ脇の下を汗でびっしょり濡らしながら見当違いの答え方をしていたはずである。

 後で知ったのだが、案の定、面接官は私に対して不合格の決定を下したらしい。しかし、有り難いことに、マッキンゼーの東京オフィスの採用担当者が、これはもしかすると英語力の問題かもしれないと考えてくれ、特別に再試験の機会を用意してくれたのだ。

  まさに命拾いをしたわけだ。しかし、私はあくまでその再試験を2次試験のつもりでいた。1次試験で不合格の判定をもらっていたという事実を聞いたのは採用された後だったからである。

 自分ではよく1次試験を通過したと不思議に思いながら、自分なりに前回の質問の意味を深く考え、また同じくマッキンゼーの1次面接を受けたIMDの同級生たちとの情報交換の結果、大体相手の求めている答え方というものが分かってきた気がした。

 コツは、とにかく問題を細かく展開 (分解) し、論理的な仮説を設定することだ。再試験はミュンヘンのマッキンゼーオフィスで実施されることになった。

 ( つづく )

 【 引用: ゼロからめざせ! 30代CEO 】 


 【 東洋経済 マッキンゼー学校 最強メソッド&全人脈 】

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2014年03月21日

マッキンゼーの知恵 (76)

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 電通からMBA(経営学修士)取得、そしてマッキンゼーに入社し、外資系メーカーのCEOに就いた谷貝淳氏の著書からマッキンゼーの仕事のしかたを紹介します。

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1995年初め、私はマッキンゼーアンドカンパニーの日本支社にアソシエイトとして入社した。出社第一日目、まず簡単な入社手続きと総務的事項の説明を受けた後、自分のデスクのある部屋に案内された。

その部屋には私を含んで6人のコンサルタント達のデスクがあった。とりあえず同室のコンサルタント達に自己紹介などをしていると、そのうちの一人が黙々と自分の荷物を段ボール箱に詰め込んでいるのに気付いた。

部屋を変わるのかと聞くと、彼は、許容期間中に昇格できなかったために本日付でクビになったのだと言う。

私が目を丸くして言葉を失っていると彼は 「谷貝さんは採用説明のときにUp or Out(アップ・オア・アウト)制度については聞いていないんですか?」 と聞いてきた。初めて聞く言葉だったので、 「なんですか、それ?」 と聞き返した。

彼は丁寧にUp or Outについて説明してくれた。マッキンゼーには世界中のオフィスで共通の「資格」 というか 「職階」 のようなものがある。大学を卒業してすぐに入社したものはまずBA (Business Analyst) という資格からスタートする。

そして次がJA (Junior Associate)。私のようにある程度の実務経験をもとにMBA等を取得して入ってきたものは、その上のアソシエイトという資格からスタートすることになる。

そしてAssociateの上にEM (Engagement Manager)、SEM (Senior Engagement Manager) と続き、その上に役員であるパートナーが存在する。しかし、これらの資格には全て許容される滞留期間が設けられており、その期間を過ぎても次の資格に昇格できなければクビになる仕組みとなっているということであった。

昇格するか、クビか、つまり、まさにUp or Outである。私は彼と同じようにMBAを取得してアソシエイトとして入ってきたのだが、EMに昇格できないまま約4年の月日が経ってしまい、クビになったのだそうだ。

大体目安としてアソシエイトは3年半から4年、EMは2年から2年半、SEMは1年半から2年というのが許容される滞留期間だそうだ。つまり、新しい資格を得た瞬間から砂時計がひっくり返り、砂が刻一刻と下に落ちていくのだ。

砂が全部落ちないうちに昇格して、砂時計を再度ひっくり返す必要がある。それも上の資格になればなるほど、砂時計が小さくなってくるというわけだ。何とも厳しい制度である。

 “「効率性」 と 「集中力」 を常に意識する”

このUP or Out制度は、日本企業のぬるま湯的居心地の良さから比較すると、とても厳しい制度のように聞こえるが、私自身は今から思うと、この制度のおかげでとても良い経験をしたと考えている。

人間、誰でも本来楽をしたがるものである。毎日会社で机に向かっていても、息抜きにネットサーフィンを楽しんだり、外出時に喫茶店でサボったりしたといった経験は誰にでもあるのではないだろうか。

たとえ毎日遅くまで会社で残業していたとしても、集中力を欠いた状態で何となくだらだらと非効率的に時間を費やしている人は多いのではないだろうか。夏場など、
会社のテレビでプロ野球を流しながら仕事をしている人を私は何人も知っている。

しかし、このUp or Out制度は、よほどのんきな人間でない限り自分自身に最大限の努力を課さざるをえない状態に自分を追い込む効果がある。毎日、一分一秒たりとも時間を無駄にせず、自分を高めることに努力をせざるをえなくなるのだ。

何しろ、毎日砂時計の砂が落ちていく音が聞こえているのだから。そうなると、人間がんばれるものである。高度な仕事遂行能力が身につくようになるために、最大限の努力をするようになる。

もちろん、一生このような環境に身をおいていては心身ともに疲弊してしまうと思うが、人生のある一時期に自分を極限状態に追い込むくらいの努力をする期間があるということはその後の人生にとってとても良いことだと思う。

一度、自分がどこまで頑張れるのか限界を経験すると、以降ちょっとやそっとの苦労や努力など朝飯前にかんじることができるからである。大きな自信がつくのである。

ただ、がむしゃらに努力をすればよいというものではない。私は2つのことを常に意識しながら努力をする必要があると考える。まず第一に、可能な限り仕事の効率性を追求するという意識を持つことである。

新しい業界の知識を吸収したり、何かを分析しようとする時には、やみくもに目の前にある資料やデータを読破したり、見当違いの本を読み始めたりしても、無駄な努力となってしまう場合が多い。

まず最初に、自分が特に何を知る必要があるのかを明確化する必要がある。ある業界の土地勘を身につけるために広く浅い知識を吸収したいのか、それとも特定の事象、例えばその業界の個々の企業の財務状況や、マーケティング施策の違いを深く知る必要があるのか、またはある業界における「勝利の方程式」 をつかむ必要があるかなどで、取り組むべき対象も変わってくる。

一般図書を読むのがいいのか、特定レポートなどに目を通すべきか、または、まとまった資料など存在しないので自分で個別データを集めることから始めるべきか、その場合はどのようなデータが必要か、または、何人かの識者に直接インタビューして手っ取り早く要所を吸収すべきか、といった具合にその手法が変わってくる。 

自分が何を知りたいのかが明確にされていないと、見当違いの遠回りな努力をしてしまうリスクが生じてしまう。

また、 これはとても重要なことだが、何を知る必要があるかを明確に理解しているということは、つまり自分の直面している本質的な課題が分かっているということなのである。

課題とは、自分が取り組んでいる仕事における最も重要なポイント、鍵のことである。無駄な努力をしなくてすむよう、常に自分の取り組んでいる業務のポイントを的確に把握していることが重要である。そんためには、 「木を見て森を見ぬ」 ことにならぬよう、常に広い視野で全体観を持ちながら仕事に取り組むべきである。

第2に必用なのは、その時々の集中力の度合いに見合った業務をするよう心掛けることだ。
同じ能力の人が同じ時間仕事をしたとしても、集中力に違いがあった場合、その結果は大きく変わってくるものである。仕事には密度が大切である。

しかし、よほど強靭な体力と精神力を持った人間でない限り、毎日、何時間にもわたり高いレベルで仕事に集中できるのは3時間くらいではないだろうか。

それ以外の時間は、かなり集中力が落ちるはずである。では、私を含めた一般の人間はどうすれば良いか。最も集中力を発揮できる時間を、最も深く頭を使う仕事にあてることである。

職種にもよるが、大抵の仕事には頭を深く使うべき性質のものと、作業的なものとが混在しているはずである。付加価値の高い仕事と低い仕事と言い換えた方が分かりやすいかもしれない。

例えば、コンピュータにデータを入力して表計算をするとか、社内書類を作成するとか、または業界関連記事に目を通すとかいった場合は、それほどの集中力は要求されないはずである。ある程度リラックスした状態でこなせるはずである。

その反対に、一旦頭の中にインプットした業界関連記事やデータの分析結果などをもとに、「では、どうするべきか」 といった戦略を考える時、または社内の色々な部門の現状課題などをもとに社内改革や業務のリエンジニアリング案を考える時などには高い集中力を発揮することが要求される。

仕事の最も付加価値の高い領域である。1日のうち、最も高い集中力を発揮できる貴重な時間を、記事チェックやコンピュータの入力作業に費やしてしまうなど、何とももったいない話である。

その反対に、疲れた頭で集中力を欠いた状態の時には、深い思考に基づく良い戦略や提案は生まれてこないものである。 

(つづく) 

 【 引用: ゼロからめざせ! 30代CEO、谷貝淳 】



 【 マッキンゼー学校 最強メソッド&全人脈 】


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2013年09月25日

マッキンゼーの知恵 (68)

【 著者の姉妹ブログ ”外資系つれづれ日記” に連載している記事をご紹介します。 http://nekketsuotoko.seesaa.net/

課題設定能力を鍛える

 “現象と課題を分析せよ”

 横山禎徳 (よこやまよしのり)、元マッキンゼー日本支社長、社会システムデザイナー
 東京大学工学部卒、米ハーバード大、MIT(マサチューセッツ工科大)スローンスクール等を経て、1975年にマッキンゼー入社。

  ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ 

 今二つの相互連鎖が起こっている。グローバル化と、産業内の垣根の溶融だ。グローバル化は世界が日本にしみ込んでくる現象であり、「海外なんて関係ない」 という人でも、知らないうちにそのシステムに組み込まれてしまう。

 分野の相互連鎖も避けられない。スマートフォンがどれだけの産業を浸食したか。デジカメ、ゲーム、カーナビ、出版・・・数えきれないほどだ。かつて変化は10年スパンで起きたが、スマホはわずか3年で世の中を変えてしまった。

 こうした相互連鎖による世の中の変化に対し、今までの知識や経験では対応することが難しい。そこで重要になるのが、課題設定能力だ。

 皆さんは 「少子高齢化」 という言葉を使っていないだろうか。わたしに言わせれば、こんな言葉を使っているかぎり、問題は全く解決しない。

 少子化は、社会・経済学的な問題だから、政策で改善できる。実際、フランスなどは出生率を2以上まで上げることに成功した。一方、高齢化は生物学的現象だ。たとえどんなに努力しようと、われわれは1年後には必ず1歳年を取る。

 こうした因果関係のない、まったく別の問題を一緒くたにして問題にすると、有効な答えを出すこともできなくなってしまう。つまり、いかに適切な課題設定をするかが答えの質を大きく左右するのだ。

 陥りがちな 「問題の裏返し」 のわなも、課題設定を誤った結果だ。たとえば “市場シェアを回復しろ” と命令する。ところが、シェアの低下は 「現象」 であって、根本の 「課題」 ではない。

 課題は、たとえば製品の競争力の低下だったりするわけだ。

 こうした新しい思考能力の訓練の場として、2008年にはじめたのが、東京大学EMP (エグゼクティブ・マネジメント・プログラム) だ。40代の大企業中堅層など社会人を対象に、週2日、半年間の講義を行い、授業料は600万円だ。

 “45歳はキャリアの分岐点 守りの姿勢を崩したい”

 なぜ40代なのか。経営者候補の育成のためなどではない。将来的には定年年齢はさらに上がる。45歳はいわば、キャリアの分岐点だ。ギアチェンジをして、後半戦を戦ってもらいたいと考えた。

 大企業で働く優秀な40代は、すでに守りに入っている。30代で評価は決まっていて、本人が意識していなくても、その評価を傷つけないようにという姿勢になっている。それを壊してやりたい。

 初めの講義で 「あなたたちは、自分が何を知らないのかを知らない」 と私は言う。45歳で何でも知っていると思うなと。だから物性科学など、 「ツルツルの壁」 のような講義も用意してある。

 つめも引っかからないような、難解な授業。だが、それでいい。きっかけができ好奇心が広がっていく。新聞を読んだときにも、目に入ってくる。それが大事なのだ。

 EMPではプロフェッショナル論も教えている。プロの起源は聖職者で、その後、医者や弁護士に広がり、19世紀にきちんと定義づけがなされた。

 コンサルタントもプロのひとつ。私は 『 マッキンゼーの1年は世間の3年と思え 』 と言っていた。世間では10年かけてプロになればいいかもしれないが、マッキンゼーでは3年でやれ、ということだ。

 日本人の体内時計は、あまりにも遅すぎる。スピードを速めないといけない。

 ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎  
 
 課題設定の秘訣

 ● 「少子化」 と 「高齢化」 という、別々の現象を混同した 「少子高齢化」 のような課題設定をしない

 ● 「シェアの低下」 に対し 「シェアを回復する」 といった、問題の裏返しをしない。

 ● 「自分が何を知らないか」 を自覚し、知的好奇心を刺激する。 

 ( 引用: 週刊東洋経済 マッキンゼー学校 最強メソッド&全人脈 ) 

 【 なぜマッキンゼーの人は年棒1億円でも辞めるのか 】

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2013年08月31日

マッキンゼーの知恵 (66)

 著者の姉妹ブログ ”外資系つれづれ日記” にアップしました! http://nekketsuotoko.seesaa.net/

【 連載記事はカテゴリー欄より通してご覧になれます 】

 「1%の課題に集中する」

 − イシュー思考はサッカーの本田圭介に学べ!
ヤフー執行役員 安宅和人、元マッキンゼー日本支社コンサルタント

1968年生まれ、東京大学大学院終了後、93年マッキンゼー入社。イェール大学大学院(脳神経科学 博士号)への在籍期間をはさみ、2008年まで在籍。同年ヤフー入社、執行役員 事業戦略統括本部長。

◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ 

 知的生産の世界では、「イシュー」にこだわらないといけない。イシューとは、今この局面でケリをつけないといけない本質的課題のことだ。世の中で問題とされているものの98%は実はどうでもいいもので、残る2%のうち1%は重要だが答えを出せない。

 だから取り組むべきは、極めて重要かつ答えを出すことができる、たった1%の問題だけなのだ。

 イシューは 「白か黒か」 を判断すべきもので、その結果により、現象なり事業なりに大きな変化をもたらすものをいう。結果としてどんな影響をもたらすか、判断できない問題は、おそらくどうでもいい問題だ。

 よいイシューは深い仮説がないと立てられない。もともとの前提が破壊されるとか、これまでは説明できなかったことが一気に説明できるような、構造的な洞察があるのが理想だ。

 そのため、世の中の前提や予見を十分把握し、「前提になっているものが否定できないか」 
「今見えているものが、従来とまったく異なる構造で説明できないか」 と反証を試みることで、よいイシューに近づける可能性がある。

 その分野の経験や直接的な知見があることは、イシューを立てるうえで欠かせない。マッキンゼーはかつて、知識や経験より、ファクトと論理に基づくコンサル手法を全面に打ち出していたが、現在はこれだけでは足りず、生の深い知見のない業界でバリューを出すことは難しい。

 マッキンゼー時代、特定産業というよりマーケティングを専門としていたため、幅広い製品や産業のプロジェクトを担当していたが、一度だけ参加を断ったことがある。

 女性下着の案件だった。やはり男には、女性下着の使い方はわからない。皮膚感覚を持てないものについてひらめきは得られないし、イシューを立てられない。

 だから、仮にまったく初めての領域に入るのであれば、1〜2日かけて現場の1次情報を集める。お客さんにたくさん会ったり、売り場を見たり。商品であれば、使い倒してみる。実際に手で触れ、現場を知ることで培う感覚は非常に重要なのだ。

 マンツーマンでフィードバックをもらう以外に、イシューを立てる能力は訓練のしようがない。研究者育成は1,000年前から徒弟制度で成り立っているが、ほかに方法がないからだ。

 自分が立てたイシューに対し、「それは価値がない。なぜならこうだからだ。」とフィードバックをもらい、「ああ、そうか」 と納得する。この 「そうか」 の繰り返しでだんだん能力が磨かれていく。

 その意味では、サッカー日本代表の本田圭祐選手などは、おそろしくイシュー・ドリブンな(イシューありきの)仕事をしている。「ここにパスを出したら得点になるのではないか」 などと、一瞬ごとに判断を行っている。

 そして、その結果は即座にフィードバックを受ける。これはイシュー・ドリブンの思考力を身に付ける理想的な環境といえる。

 “フレームワークを使うな。ゼロから自分で考える”

 イシューを特定できたら、次は分解する。大きなイシューそのままでは解けないことが多いためだ。

 たとえば 「新規事業のコンセプトはどうあるべきか」 という問いを立てても、これではまったくわからない。そこで、 「事業コンセプト」 を 「狙うべき市場ニーズ」 と 「事業モデル(where & how)」 に切り分け、それぞれについて本当に見極めるべきサブイシューを拾い上げていく。

 市場ニーズに関してであれば、たとえば 「市場はどのようなセグメントに分かれ、どのような動きがあるか」 「時代に留意するべきことはあるか」 などの論点が考えられる。これらのサブイシューのそれぞれに仮説を立てて、検証を行っていく。

 気をつけなければならないのは、「3C」 (事業戦略立案の3つの基本要素=顧客、競合相手、自社) や 「7S」 (組織の設計における7つのコア要素=戦略、システム、構造など) といったフレームワークから考え始めないことだ。

 フレームワークは、生半可に使うと危ない。不要な要素が紛れ込んだり、逆に大事な要素が抜け落ちる危険もある。

 ダブりも漏れもない状態を、マッキンゼーでは 「MECE (mutually exclusive, collectively exhaustive)」 という。重要な論点を漏らさず拾い上げるために意識すべき考え方だが、フレームワークは、頭を使わないでとりあえずMECE風に考えるためのものだ。

 「風」というのがミソで、おおむねMECEだが、本当にMECEなのかは疑問が残る。

 だから、その局面ごとに、「本当に大切なことは何か?」 をその場で考えなくてはいけない。それも頭で考えるだけでなく、現場で1次情報を得ながら考える。MECEを意識するのは最後でいい。

 論点を出しきった後に抜け漏れがないかを確認し、漏れがあれば埋める。既存のフレームワークは、使うとすればこの段階だが、本当に頭を使って考えることができる人には必要ないものだ。

 素朴に、ゼロベースでどれだけものを考えられるかこそが、真の知的生産能力なのだ。

 分析結果を説得力をもって伝えるには、チャート(図表)も必要になる。チャートの良し悪しは数秒で分かる。美しいか、美しくないかの感覚だ。

 優れたチャートには3つの条件がある。

@ メッセージがイシューに沿っていること。
A 図表のタテ軸とヨコ軸の広がりに意味があること。
B 図表がメッセージを裏付けていること。


 ダメなチャートの半分くらいは、そもそものイシューがはっきりしていないため、何のためのチャートか、作成者自身がわかっていない。イシューがはっきりすると、チャートは自然とはっきりしてくる。

 ちなみに、イシュー・ドリブンの思考は知的生産に従事する一部の人のみ関係するもの。一般のビジネスパーソンが 「この仕事はイシューではないからやらない」 と言ったら大問題だし、事業は回らなくなる。

 経営課題の大多数には難しいイシューがあるわけではなく、「やるか、やらないか」。そこを混同してはならない。
 (つづく) 

 ( 引用: 東洋経済 マッキンゼー学校 最強メソッド&全人脈 )




 ( 安宅氏の著書 『イシューからはじめよ−知的生産のシンプルな本質』 はマッキンゼー新入社員の必読書とされている )


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