2015年01月30日

ヘッジファンド特集 (3) 年収1,000億円! 

 − ありきたりの経済常識の裏を行くことで株や債券市場で大儲け。医学生の道を歩きながら株式市場を極めたマイケル・バーリ 

 【 引用: 世紀の空売り、マイケル・ルイス箸 ”ムーディーズもゴールドマンもクソくらえ” 】


 年収1,000億円というと、どういった人たちが目に浮かぶだろうか? 日本ではまず思いつかないだろう。

 ところが、米国においては、マネー・マネージャーたる資金運用の世界で年収1,000億円  も稼ぎ出す辣腕ファンド・マネージャーがいるのである。

 ポールソンファンド、ミレニアム、ソロス・ファンド等、欧米諸国の富裕層やアラブの政府系ファンド、QE2のお金を預かり、債券市場や為替市場、株式市場で切った、貼ったの激しい攻防戦を繰り広げる頭脳派である。そして彼らの多くは短期投資家ではなく、長期投資派である。

 デリバティブや先物取引を使い、最小限のお金をもとに借入金を駆使したレバレッジで元本を膨らませ、債権数理、統計学を駆使した数式をもとに大金をかけて、ふつーのサラリーマンが50年かけて稼ぐ額を、わずか1年で稼ぎ出す、およそ凡人離れした人たち。

 そんな彼らがどんな思考回路で常人の裏をかいたか、という事実が金融小説、マイケル・ルイスの書籍で徐々に明らかにされている。

 2007年から8年にかけてのサブプライム・ショック、リーマンショックで世の過半数が大損を被った年に、世間の経済常識の裏を行くことで年収1,000億円以上を稼いだヘッジファンド・マネージャーがいたのである。

 彼らが成功したのは何のためか?

 端的に言えば、自分の直感が正しい、おかしいと思った現象を、深く突っ込んで調べ上げた結果、金融界の上層部がたとえ何と言おうと自分の意見を押し通したと言えば良いだろう。

 アラン・グリーンスパンという、日本でいえば日銀総裁にあたる経済のエキスパートが

 「アメリカ経済は健全だ。バブルのきざしもない。消費経済は順調に拡大している。」 という大本営発表に、眉に唾をつけて疑い、貸金返済能力のかけらもないメキシコ移民、プエルトリコ移民が自分の年収の10倍もの借金をしてカリフォルニア州やニューメキシコ州、ネバダ州で分不相応な一戸建てを建築する、という不動産バブルがおかしいと、正面切って論争を挑み、自己資金を貼ったのである。

 アメリカの金融界は、それでも秩序正しく投資活動をしていた。商業銀行がそうした移民や低所得者向けにローンを出し、それが数百億円や数千億円の貸付残高になると、商業銀行は一行だけで持つリスクを分散させるために、今度はそれを証券化商品にして、紙切れの債券を多数発行して、上位の金融業者であるモルガン・スタンレーやメリルリンチ、ゴールドマン・サックスといった投資銀行 (証券会社) に、 “住宅モーゲージ債券” というさも尤もらしい名前をつけて売りさばいた。

 今度はモルガン・スタンレーや、ゴールドマン・サックスが、それらウサン臭い証券化商品に、ムーディーズやスタンダード&プアーズが付けた財務信用格付けがAAですとか、Aプラスですといった大家のお墨付きをもって、アラブや欧州の富裕層、政府系ファンドに大挙して売り回った。

 問題は、アメリカを代表する投資銀行や商業銀行が、顧客に売り出すときに “証券化商品の財務状況は健全です” と言い切った格付け機関の調査能力がどれほど信頼できたか、ということである。

ヘッジファンド・マネージャーは、こうした米国格付け機関や投資銀行が是と認めた事実に眉に唾をつけて疑い、 「カリフォルニア州の高額な一戸建てを、年収300万円の低所得者が購入できるのはおかしい。」  と、世の経済常識の逆張りの投資を張って大儲けした。

 CDS (住宅ローン債権にかける保険商品) を大量に買い、世の中が 「いくら何でもこの現象はおかしい、と気づいた時、マイケル・バーリは元本の10倍以上の金を手にしたのである。

 “義眼の相場師 兼 医師、 バーリ”

 2004年はじめ、義眼の株式投資家であったマイケル・バーリが、未知の領域だった債券市場に夢中になっていた。アメリカの金銭貸借の仕組みについて、できる限りの知識を頭に詰め込んだ。債券市場に新たに取りつかれていることを、バーリは誰にも離さなかった。

 ひとりカリフォルニア州サンノゼの事務所にこもり、本や、新聞・雑誌の記事や、金融関係の書籍を読みあさった。とりわけ知りたかったのがサブプライム・モーゲージ債の仕組みだ。莫大な数にのぼる個人の住宅ローンを積み上げて造られた一基の塔。

 最上階にある債券は、いちばん先に償還されるので、格付け機関ムーディーズとスタンダード&プアーズによる格付けが最も高く、金利は最も低い。最下階の債券は、最後に償還を受け、真っ先に損失を被るので、格付けが最も低い。

 下のほうの債券を持つ投資家は、引き受けるリスクが大きく、そのぶん、上方の投資家より高い金利を得られる。モーゲージ債を買う場合、投資家は塔のどの階に投資するかを決めなければならないが、マイケル・バーリは、モーゲージ債を買おうと考えているわけではなかった。

 サブプライム・モーゲージ債を空売りする方法を模索していた。どのモーゲージ債にも、血の気が失せるほど退屈な130ページの目論見書が添付されていた。そこに書かれた細かい文字を読むと、それぞれが独自の小さな法人になっていることがわかる。

 バーリは、2004年から2005年はじめにかけて、何百通もの目論見書を通読し、何十通かを精読した。年百ドルの料金を支払えば、誰でも全部の目論見書をネットから入手できるのだが、それをここまでちゃんと読みこんだ人間は、本文を記載した弁護士以外には、バーリただ一人だろう。

 この時期のモーゲージ債、2004年という早い時期であっても、貸し出し基準が低下していることがはっきりと読み取れた。貸し出し基準は下がっているどころか、落ちるところまで落ちていた。その最底辺についていた名前は、“金利支払い元本逓増変動金利型サブプライムローン”

 このローンに飛びつくのは、収入の無い人間だ。バーリが理解に苦しんだのは、貸す側がなぜそんなローンを組みたがるのかということだった。

 ヘッジファンド・マネージャーの多くは、顧客の投資家たちとのおしゃべりに時間を費やし、顧客に出す四半期ごとの報告書を形式的なものとみなしていた。面とむかって人と話すのが苦手なバーリは、そういう報告書を、自分の能力を顧客に示す手立てとして、重要なものと考えた。

 バーリは解説する。「貸し手が節度を失っているという明らかな兆候でしたね。ローンの売上を増やすために、条件をどんどんゆるめていたのですから。」

貸し手は自分でローンを抱え込まず、ゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレーやウェルズ・ファーゴなどに売り、先方がそれを債券にパッケージして売るという仕組みが出来上がっているのだ。

 当時のバーリには、投資戦略上の問題を抱えていた。サブプライム・モーゲージ債の各階層(トランシェ)にはひとつ特徴がある。それは、空売り(ショート)ができないということだ。

 株や債券を空売りするためには、まず借りてこなくてはならない。ところが、サブプライム・モーゲージ債のトランシェは、ちっぽけで、ありかがわからなかった。それが下落するほうに公然とかけることができなかったのだ。

 “義眼のせいで”

 バーリは自分が他人と違うということを、2歳のとき感じ取っていた。2歳のときにめずらしい型の癌をわずらって、腫瘍を除去するという手術を受けた際、左の眼球を摘出された。片目を失った少年は、他の誰とも違う見方で世界を眺めることになる。

 少年期のバーリは、ほとんどの時間を一人で過ごすことを特別なこととは意識しなくなった。20代後半までには、友だちのできないタイプの人間だという自覚を得るに至った。サンノゼのサンタ・テレサ・ハイスクール、UCLA(カリフォルニア大ロサンゼルス校)、ヴァンダービルド医科大学時代を通じて、長続きする対人関係を一度も築けなかった。

 それがどういうわけか、結婚は二回している。ひとりめの妻は韓国系の女性で、すでに別れて違う街に住んでいた。二人目の妻とは、まだ結婚生活を続けていた。

 バーリは、マッチ・ドットコムのプロフィール欄に、“片目しかない医学生。人付き合いが苦手で、14万5千ドルの学資ローンを抱えています” と正直な自己紹介を書いた。

 “株式市場に対する強いこだわり”

 バーリはコンピュータには、心底から興味をいだいていた。機械そのものが好きなわけではなく、生涯のこだわりを追求するうえで、コンピュータが役に立つからだ。生涯のこだわりとは、株式市場の仕組みを知ることだった。

 小学生のころ、父親に新聞の株価一覧を見せられ、株式市場はゆがみきった場所だから、けっして信用してはいけないし、まして投資などするものではないと聞かされて以来、その仕組みがずっとバーリを魅了し続けてきた。

 子供の頃でさえ、その数字の世界を、論理で制してみたいと思っていた。バーリは、株式市場に関する本を興味として読み始めた。。。

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 ( つづく )



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