2015年01月24日

マッキンゼーの知恵 (84)

 電通からスイスのローザンヌ大学でMBA(経営学修士)取得、そしてマッキンゼーに入社し、外資系メーカーのCEOに就いた谷貝淳氏の著書からマッキンゼーの仕事のしかたを紹介します。

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 “経営における運転席と助手席の違い”

 【 連載記事はカテゴリー欄 ”マッキンゼーの知恵” より通してご覧になれます。】

 マッキンゼー生活が2年も経つと、さすがにコンサルタントとしての基本的な分析能力や戦略提案能力は身についてきた。相変わらず、週6日にわたる1日15時間労働という状況は改善されてはいなかったが、精神的にはかなり余裕が出てきて、物事を自分の言葉で語れるようになってきた。

 このままいけば、砂時計を早めにひっくり返すことができそうだという自信も生まれてきた。しかし2年目を過ぎたあたりから、私は新たな大きな壁に直面するようになったのである。それは、 「 クライアントに対するコミットメントの不足 」 である。

 コミットメントとは、一言で言えば、“誠心誠意、心から自分の努力を対象に捧げること” とでも訳そうか。平たく言うと、クライアントに対する思い入れの不足ということである。もちろん仕事の手を抜いていたわけではない。しかし、自分のどこかでクライアントに対するコンサルティングの情熱が薄れているのである。

 例えばクライアントが輸出企業だったとしよう。急激な円高になってクライアントの輸出競争力が落ちることが予想されたとしても、心底そのことを心配する気持ちが自分の中に湧き出てこないのである。ただ、冷静に対処法を考えるだけなのである。

 私の同僚に、急激な円高を耳にしてクライアントのことが心配で夜眠れなかったという者がいた。そこまで思い入れを持てるとはうらやましい限りである。

 当然、クライアントに対する思い入れが強いほど、自分のコンサルティング活動にも熱が入る。生き生きとして仕事に取り組めるわけである。私も一時はクライアントに対する自分の気持ちを高めようと努力したこともあったが、こればかりは努力してどうなるものでもなかった。

 分析能力やプレゼンテーション能力を努力して高めるのとは訳が違うのである。思い悩んだ結果、私はある結論に達した。

 私のような利己的な人間は、経営の 「運転席」 に座って自分でハンドルを握らないと気が済まないのである。

 コンサルタントとは、言ってみれば車の助手席に座って、運転している社長に対して色々とアドバイスする役割である。

どの方角に向かってどの道を選ぶべきか、スピードはどのくらいで走るべきか、車の状態を最善に保つためにはどこを修理すべきか、燃費をよくするためにはどうするべきかなど、自分はハンドルを握らないで横からアドバイスをする役割である。

 私はこれが不満だったのである。私はあくまで自分でハンドルを握りたいのであった。電通時代にやっていたことも基本的には、広報部長という 「運転手」 に対して横からアドバイスをするという、やはり助手席的な役割であった。

 こうして考えてみると、私は今までの会社人生をずっと、助手席的な役割に費やしてきたことになる。そして、助手席からつぶさに運転手の動きを観察し、運転技術を学ぶうちに、自分がハンドルを握りたいと言う衝動に駆られてきたのである。

 私のようなタイプの人間は、自分が助手席に座っている限り、たとえ雨が降って路面が滑りやすくなったり、または見晴らしの良い峠道を快適に走っていたとしても、運転手が感じているほどの危機感や充実感を共有することができないのである。

 やがて私は、クライアントに対する自分のコミットメントを高めようと無駄な努力をするより、自分自身が運転する側に写ることを考えるようになった。

 マッキンゼー生活を2年も過ぎると、何者かのエグゼクティブ・サーチ・ファーム(ヘッドハンター) から電話がかかってくるようになった。大体は、電話でまず転職の意向を聞かれ、「 良い話があるなら 」 と答えると、実際にサーチファームのコンサルタントに会って、詳しく相手先企業の説明を受けることになる。

 そして、その時点で興味を示せば、実際に相手先企業の人間に会って面接を受けることになる。

 私のところに来た引き抜き話は、外資系スノーボード会社の日本支社長、外資系スポーツシューズメーカーの事業部長、外資系工作機械メーカーの営業本部長、外資系エンターテインメント会社の宣伝部長、外資系飲料メーカーの事業部長、そして外資系パスタメーカーの日本支社長といったものであった。

 もちろん、これらは皆、異なるサーチファームからのオファーである。MBA卒業時に、ヨーロッパでほとんどの企業から相手にされなかった経験と比べれば、随分と隔世の感があった。

単にMBAという机上の空論だけでなく、戦略コンサルタントとして実際の企業の経営における諸課題に取り組んできたことが労働市場で評価されたのだろう。

 これもマッキンゼーのおかげである。

 (つづく)

 【 引用: ゼロからめざせ! 30代CEO 】


 【 マッキンゼー流 図解の技術 】
 
posted by ヒデキ at 12:41| Comment(0) | TrackBack(0) | マッキンゼーの知恵 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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