2014年11月30日

商社 アジアの突破口 (2)

ヘルスケア争奪戦 国またぐ病院網に照準

 シンガポールにメディクロ・パートナーズという会社がある。メンバーは日本人2人で、インドネシアに足しげく通う。目的は生体肝移植の検査、手術後の診療などを施す専門クリニックの調査だ。斎藤雅文社長は「国をまたぐ診療ネットワークを築きたい」と語る。


 実は、この会社の親会社は三井物産だ。なぜインドネシアの診療所に興味を持つのか。

 シンガポールにあるマウントエリザベスノビーナ病院。荘厳な外観や内装は高級ホテルのようだ。アジア最大の病院グループ、IHHヘルスケアの中核拠点で、高度先進医療ときめ細かいサービスを求めて海外から来る患者が後を絶たない。

 三井物産は2011年にIHHに900億円を出資し、病院事業に参入した。13年に第2の矢として神戸の医療団体と組み、ノビーナ病院内に生体肝移植の専門クリニックを開設。日本人の専門医が常駐し、IHHの価値向上につなげている。

 ただ、クリニックが1カ所では限界がある。海外からの患者が手術後も自国で定期的に受診できる仕組みを作ろうとしており、インドネシアはその有力候補地なのだ。

 IHHは10カ国に37病院を持つ。インドや中国も積極開拓し、17年までに病床数を5割増の9千床にする計画だ。しかし、三井物産はIHHだけに頼ることはしない。

 担当の田中聡常務執行役員は「今後5〜10年かけて病院周辺事業を育てる」と強調する。予防事業や介護、病院業務の受託、人材派遣……。これから拡大する中間層にも照準を定める。アイデアは尽きず「必要であれば買収を仕掛ければいい」。三井物産の病院事業は新たなステージに入る。

 人口増や高齢化でアジアの医療支出は18年に1兆6千億ドルと、13年比6割増となる見込み。この成長市場を取り込もうと、他の商社も三井物産を追い始めた。

 豊田通商とセコムグループが今年3月にインド・バンガロールで開設した総合病院「サクラ・ワールド・ホスピタル」。今夏、豊通の本社から“カイゼンのプロ”が派遣されてきた。同社の原価低減・改善部だ。

 「倉庫の保管スペースを削減しよう」「使用期限切れの医薬品をなくそう」。同部は日本でトヨタ生産方式をベースにグループ工場や施設を視察し、物流や作業の効率化を指導してきた。ノウハウを病院に移植する。

 開設時は患者数の把握が難しく、医薬品の過剰在庫を抱えていた。薬の使用期限をデータ管理し、商品・用途別に置くようにして、薬や資料の在庫を3割減らした。

 豊通の松下剛常務執行役員は「病院の運営に参画すれば(必要な資材を一括管理する)院内物流などの周辺事業を手掛けられる」と語る。

 双日は病院支援のキャピタルメディカ(東京・港)と提携した。病院に医師経験者や財務担当者を派遣し、効率的な運営手法を教える。ベトナムやインドネシアなどの病院に営業を始めた。

 商社はアジアの健康・医療関連事業に関心を持ちながら、国ごとに異なる制度の壁にぶつかり、攻め切れていなかった。三井物産のIHHへの出資が呼び水となった。

 三井物産の飯島彰己社長は「日本で規制緩和が進んだときに、アジアで培ったノウハウを輸入したい」と話す。アジア攻略は日本の事業を進化させる潜在力も秘める。

 
posted by ヒデキ at 17:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 総合商社の機能と組織 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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