2014年08月22日

伝説の商社マン 岡藤正広 伊藤忠商事社長 (1) 

 連載記事、『伝説の商社マン』 では、残業を8時で強制終了させ、朝7時からの出勤を社員に促して仕事の効率革命を起こして話題となった伊藤忠商事の岡藤正広氏をとりあげます。

 “幼少時、家業を手伝いながら遊びにも夢中、好奇心旺盛なやんちゃな子”

 岡藤は、大阪市平野区に生まれた。個人商店や中小メーカーが集まる下町。家の隣はたまたまソロバン教室だった。ソロバンの先生は休みの日でも隣だから、  
 「まあちゃん、そろそろいこうかあ」 と呼びに来ます。

 テレビでプロレス番組を見たかったんやけど。上級生にまじって習ってました。嫌々やったけど、上達ははやかったようです。

 おやじは戦地からの復員組です。裸一貫で商売をはじめました。市場で仕入れた野菜や惣菜を運び、食堂とかのお客さんに納める仕事です。車に乗ってついていくと、重宝がられてな。客先でよく、 「はーい、そろばん」 と呼ばれました。かなわんな、と思うけど、そろばんを使わずに暗算して金額をびしっと出してみせると、お客さんもびっくりする。

 おやじもうれしそうやった。ひそかな自慢だったのかもしれません。

 家の周りはびっしりと住宅が建ち、やっと入れるせまい路地の迷路みたいな街でした。おふくろは僕を心配してました。今はピンクとか黄色とか明るい色が好きやけど、小学生になる前に描いた絵は黒色ばかり使っていたからです。

 当時の性格からか、絵まで暗かったのかもしれません。絵画教室も通わされました。勉強は苦手ではなかったけれど、机の前にじっと座っているのが性にあいません。宿題はパパッと終わらせ、遊びまわっとりました。動物園でゴリラに向かって意思を投げつけ、起こられたこともあります。

 小学生時代は友達といっしょにバスの路線を終点まで歩いて旅したこともあります。お金はなかったから歩いたのです。楽しかったです。

 中学に進む頃にはやんちゃもおしまい。高校は進学校の府立高津高校に進みました。結核のため、大学は2年遅れながらも東京大学経済学部に進学しました。しかし、仕送りはなかった。

 最初は駒場寮暮らしでした。汚いし、5人部屋。風呂は夜9時になると火が消え、冬は水です。それでも安いから助かっていました。ところが、3年生になりキャンパスが本郷になると寮がない。どないしようと考えていたら、助け舟があったんです。

 江東区の亀戸でビー玉工場を経営する社長さんです。 「住み込みで息子に勉強を教えてくれればいい。」 と声をかけてもらいました。居候生活は食事とか風呂の時間とか、ごっつう神経を使いました。 「居候三杯目にはそっと出し。」 という気分だったかもしれません。でも、向こうは全然気にしていなかった。

 1年後、教えていた息子さんが大学に合格して、家庭教師としての仕事はそこで終わり。居候する理由がなくなってしまうと、今度は 「先生、宅建の免許とってくれないか。お金も払う。」 と言うてくれました。結局、居候は2年間。

 最後は 「ずっとウチを手伝わないか」 と誘うてもくれたけど、実現はしませんでした。自分で商売の面白さを見つけていたんです。

 在学中、商売のタネは身の回りにたくさんあった。サークルで知り合った女子大生から、
「寮で夜になって飲みものを買おうとしても、お店が遠い。外出も怖い。」 という話を聞きました。寮生は同じように不満を持っていたらしいんです。

 コンビニエンスストアもない時代です。そこで目を付けたのが自動販売機。学生やったけど、飲料メーカーとかけあって、女子大の寮に置いてもらったんです。売れた分の何%かもらいました。販売機を置く権利を押さえただけで、チャリンチャリンとお金が入ってくる。

 しばらくして販売機の権利は寮に譲ったけど、品物の売り買いだけが商売ではないと知りました。

 夏休みには、大阪の実家に帰省する前、新聞に2行広告を出しました。家庭教師先の募集です。 どんな人がどういう先生を求めているか考え抜いて、たった2行に凝縮しました。夏休みの1か月だけなら奮発すると読んで、

「 夏季特訓。当方東大生。」 関西には、東大生を一目見たいという人もいるかと思って書いたら、実家には電話がじゃんじゃんかかってきた。

 生徒は全部で10人くらい。1人あたり週に2、3回です。同じ地域の生徒をまとめて回れるように時間割を組んで、全員に勉強を教えました。思い返すと、効率よく生徒の家を回る要領は、商社に入社して貨物船のスケジュールを考えることとそっくりですわ。

 もし就職していなかったら、家庭教師の派遣会社をつくって身を立てていたかもしれません。

 (つづく) 

 【 商戦 伊藤忠 − 火の玉社員の半世記 】


posted by ヒデキ at 21:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 伝説の商社マン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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