2013年11月09日

総合商社の機能と組織 (30)

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エネルギー部門 油価の上昇で投資先が収益に大きく貢献

● エネルギー投資に先鞭をつけたのは三菱商事。その成功にならい、各社が権益確保に血道をあげる。
● 投資案件の生産開始と油価上昇が、近年の各社収益を押し上げた。

“トレードから権益確保へ”

商社のエネルギー部門はオイルメジャーから原油を輸入し、国内の石油精製各社に供給するのが主流であった。多くの商社には原油の輸入権がなく、石油精製会社の輸入を代行しているだけであったが、三菱商事のように傘下に石油精製会社数社を擁すところなどは強みを発揮した。

  かつてはこうした輸入代行が中心であったが、1960年代初頭より三菱商事が巨額資本を投じてブルネイLNGに着手、1974年に最初のLNG船が入港した。折しも当時、オイルショックで油価に連動してLNGの価格も上昇し、毎期1億ドルの配当をもたらしたという。

 この成功例にならい、70年代半ば以降は各社とも権益の確保に注力、三井物産のアブダビLNG、商事と物産の西豪州LNG、商事のマレーシア・サワラクLNGなどは、この時期に参画している。

 80年代半ばには西豪州LNGが正式にスタートし、丸紅がカタールLNGに調印、90年代に入ると各社の資源投資はさらに拍車が掛かった。主な案件では、商事と三井物産のサハリンU (天然ガス)、商事・物産・伊藤忠商事のオマーンLNG、伊藤忠・旧日商岩井のカタール・ラスラファンLNG、丸紅のインド・ラーバ油田など、現在収益に貢献している案件が多い。

 2000年代になっても資源投資への積極的な姿勢は衰えず、物産は豪州エンフィールド油田、オマーンブロック9鉱区原油生産事業、豪州南東部海上カジノガス油田など、丸紅は米国メキシコ湾フェアウェイ・ガス田、英国領北海油田など、伊藤忠はアルジェリアのオハネット・ガス田などにそれぞれ参画している。

 “川上から川下の事業展開”

 商社は70年代から80年代にかけて、海外の販売網充実のため北米やアジア (シンガポール) にトレーディングの中核会社を設立、グローバルな販売体制の構築を進めた。たとえば、商事のペトロダイヤモンド (米国)、伊藤忠ペトロリアム香港、丸紅のMIECO (米国) などが挙げられる。

 また、国内の精製会社向け取引やSS (ガソリンスタンド)向け取引は、三菱商事石油や三井石油、丸紅エネルギーなど、子会社が担当している。先の権益からトレーディング会社、国内販売会社と川上から川下までのバリューチェーンを展開するのが特徴である。

 国内の販売会社について、2000年代後半に体制見直しが見られた。物産は2008年、九州石油や国際油化を売却して三井石油の強化に絞り込んでおり、伊藤忠は伊藤忠エネクスに伊藤忠ペトロリアムから石油製品のロジスティクス業務を移管して強化している。

 一方、国内のLPG販売事業は市場の成熟化を鑑み、合従連衡の動きがこの間に相次いだ。

まず、2006年に三菱液化ガスと出光ガスアンドライフがアストモス・エネルギーに統合したのを皮切りに、物産系と丸紅系の三井丸紅液化ガス、住商系と昭和シェル石油系のエネサンスホールディングス、そして2009年4月に、伊藤忠、ジャパンエナジーほか5社がLPG事業をジャパンガスエナジーに統合再編した。

 エネルギー部門は活発な権益投資の一方で、こうした選択と集中も進めてきたわけだ。

 “原油価格高騰により高収益部門に”

 2008年7月にWTIで1バレル147ドルへ暴騰するなど、2000年代半ばからの原油価格上昇により、各社のエネルギー部門は業績が急拡大し、高収益部門に躍進した。

 前述のような権益確保の経緯から、これまで商事がLNG分野での強みを活かし、断トツの利益規模を誇ってきたが、2007年3月期には物産がトップに浮上、以来2009年3月期まで3期連続で首位に立った。

 物産の利益拡大には、2007年の三井石油開発の子会社化、開発中の案件の生産開始などが大きく寄与している。後者では、2006年7月より先のエンフィールド油田、2007年7月に豪州のチュイ油田、2008年8月に同ヴィンセント油田と生産開始が相次いだ。

 物産の躍進は商事が手薄だった原油権益の確保に重点注力したのがポイントである。

 商事も原油での遅れを取り戻すべく、原油の高騰していた時期にメキシコK2油田、インドネシアのカンゲアン石油・ガス権益などに大型投資を実施している。

 物産の案件以外にも、生産開始や増産する注目の大型プロジェクトは多い。伊藤忠と丸紅が参画するサハリンTは、2001年に商業性宣言をし開発フェーズに移行、2005年10月よりロシア向け原油販売および輸出を開始した。

 また、サハリンUは2008年12月に原油の通年出荷、2009年3月にはLNGの出荷が始まり本格的に動き出した。

 商事と物産の西豪州LNGでは2008年9月第5系列が稼働し、2009年7月には、この2社と、住商と双日の子会社LNGジャパンが参画するインドネシアのタングーLNGプロジェクトが第一船を出荷した。

 また、伊藤忠では、アゼルバイジャンACG原油プロジェクトが2008年よりすべてのフェーズが生産開始に移行し、同社に多大な利益の果実をもたらしている。

 “油田の暴落で減損、撤退損を計上”

 2008年9月のリーマンショック以降、原油相場が暴落し、商事や伊藤忠で権益投資先の減損や撤退損を計上するなど損失を被った。

 原油価格の暴落でエネルギー部門の収益も直撃を受けることとなり、権益の利益が業績に占める比重が高まったことで、油価に左右される収益構造の不安定が露呈した。

 ( 引用: よくわかる商社 ) 





posted by ヒデキ at 19:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 総合商社の機能と組織 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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