2013年02月09日

伝説の商社マン (12) 世界最強、丸紅の穀物トレーダー

商社最強の穀物部隊に成長 − 丸紅を穀物メジャーに押し上げた、辣腕トレーダーの活躍

 丸紅がアメリカ・カーギル、アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(ADR)など、穀物の国際取引の約7割を牛耳る5大穀物メジャーの仲間入りを果たす。

 日本経済新聞は5月8日付朝刊1面で「丸紅は米国の穀物3位、ガビロン(ネブラスカ州)を買収する。親会社の米ファンドなどから38億ドル(約3000億円)前後で発行済みの全株式を取得する方針」と報じた。

 前日、7日の決算会見で、丸紅の朝田照男社長(63)はガビロン買収について「当社も米国に強い穀物トレーダーとして興味は持っている」と述べたのがヒントになったのかもしれない。

 ガビロンはカーギル、ADRに次ぐ米国3位の穀物大手。米国内に集荷設備など145カ所の拠点を持つ。年間の取扱量は2000万トン前後でトウモロコシや小麦が主力だ。

 丸紅の12年3月期の穀物取扱量は約2200万トンで、世界では6位グループだった。それがガビロンを傘下に収めると、丸紅の取扱量は年4000万トン規模となる。穀物メジャートップのカーギルのそれは、4000万トン前後で、カーギルと肩を並べ世界首位級に浮上する。

 穀物メジャーのお株を奪う積極投資で丸紅は、取扱量を急激に拡大している。穀物部隊の先頭に立っているのが、スカウトしてきた凄腕の穀物トレーダーたちだ。競争力のある買い付け力、安定的な販売力、効率的な輸送力の3つをいかにうまく組み合わせるかが穀物トレーダーの腕といわれている。

 2006年に当時、穀物の世界を動かす25人のトレーダーの1人に数えられていた食品専門商社、東食の若林哲氏(58)を引き抜いたのを手始めに、その後も丸紅は、穀物メジャー4社を渡り歩いた辣腕トレーダー7人を年収数億円の高待遇でスカウトした。

 東食時代の若林氏は、崩壊前のソ連で業界最大手の米カーギルを凌ぐ量のトウモロコシを売買するなど、世界に名を轟かせていた。

 丸紅は11年4月、旧食料部門を再編・改組し、穀物、畜産、農産の事業分野で構成する食糧部門を新たに立ち上げた。食糧部門長には執行役員に昇格した若林氏が就いた。転身5年で執行役員・食糧部門長になったわけだ。前例を見ないスピード出世といわれた。

 この間、丸紅の穀物部隊を率いてきたのが、昨年、常務執行役員に就任した岡田大介・前食料部門長(55)。

 丸紅の岡田氏と東食の若林氏は、若手の社員時代から、よきライバルだった。実は、若林氏を引き抜いてきたのは岡田氏である。近年の穀物部隊の躍進を引っ張ってきた岡田氏の一番の理解者である若林氏が、穀物部隊を引き継ぐことになった。

 若林氏など辣腕トレーダーの引き抜いたことにより、丸紅の穀物部隊は商社最強となり、最大の消費地の中国市場に勝機を見出した。

 中国食糧備蓄管理総公司(シノグレイン)傘下の油脂事業会社であるシノグレイン油脂(北京市)、飼料最大手の山東六和集団(山東省)と提携。両社との合弁会社を通じて中国内に15カ所程度の搾油工場を数年内に建設。丸紅が原料となる穀物を供給することになっている。

 中国向けの取引増加により04年に約700万トンだった穀物の取引量は現在では約2200万トンにまで急成長し、穀物で丸紅は総合商社のトップに立った。

 穀物部隊を率いる食糧部門長の若林氏のミッション(使命)は、手つかずの中東・アフリカへの展開。世界規模で穀物の集荷から販売、加工まで一貫体制を築き、「3000万トン・クラブ」と称される穀物メジャー入りを果たすことだった。

 若林氏はミッションを達成するまでの時間を大型M&A(企業の合併・買収)で短縮したことになる。ガビロンの買収により、穀物メジャーの仲間入りを果した。

 しかも、「3000万トン・クラブ」を一気に飛び越えて、穀物取扱量は4000万トン規模に拡大。世界首位の穀物メジャー、米カーギルに並ぶ。若林氏は居並ぶ穀物メジャーを抜き去り、トップランナーに躍り出たのである。

 丸紅の穀物メジャーへの挑戦は、新興国での既存の穀物メジャーと深刻な"対立"を生む可能性がある。丸紅の現在の取扱量は、既存のメジャーからの買い付けに支えられている。虎の尾を踏めば手痛いしっぺ返しを受けかねない。

 これまで丸紅は電力業界と紙パルプに強いといわれてきたが、いまや穀物が主力事業の筆頭となっている。

 【 総合商社図鑑 未来をつくる仕事がここにある 】

posted by ヒデキ at 13:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 伝説の商社マン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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