2013年01月13日

商社の不思議 (8) 

 ”逆風の鉄鋼部門で生き残りをかける “ 

 時代の変化は、商社のビジネスそのものを変化させた。時計の針を30年前に戻そう。高度経済成長期から1990年代にかけて、商社の大きな収益源でありながら、いまや死後となった言葉がある。 「 眠り口銭 」 だ。

 商社がメーカーとユーザーとのあいだに帳簿上、介在し、特段の機能を果たさなくとも、受け取っていた手数料のことである。

 高度経済成長期を牽引した鉄鋼業界においても、かつて商社は取引価格の3%程度の眠り口銭を当然のように手にしていた。しかし、濡れ手に粟の状態は、じわりと批判にさらされるようになる。

 日産自動車に乗り込んできたカルロス・ゴーン社長による大コストカット 「 ゴーンショック 」 は商社にまでおよび、 「 口銭が一気に4〜5割カットされた 」 と大手商社鉄鋼部門幹部は当時を振り返る。 

 しかし、商社の従来取引が軒並みマイナス査定されるなかにあってプラスの評価を得たものもある。「 コイルセンター 」だ。

 コイルセンターは、鉄鋼メーカーから薄板などの納入を受け、ユーザーの希望に応じて、切断・加工を施す加工拠点のこと。商社の鉄鋼部門にとって、このコイルセンターは事業投資の柱だ。

 80年代後半以降の自動車メーカー、部品メーカーの海外本格進出に歩調を合わせ、各社競うように海外展開してきた。

 材料の手配、加工、ジャスト・イン・タイム納入といったユーザーに対する機能だけでなく、鉄鋼メーカーにとっても、じかに取引しない小ロットの注文をまとめ、与信などの機能も果たす。

 プラス評価を得たゆえんだ。ただ、委託加工だけではコイルセンターの加工賃は下がるばかり。加工品質、歩留まりなどはもちろん、

 「 材料の発注、通関手続き、ジャスト・イン・タイム納入と、なんでもやっておカネを頂くしかない 」 ( 商社鉄鋼部門幹部 ) というサービスの総力戦になっている。

 三菱商事と双日の鉄鋼部門で発足したメタルワンで、自動車・電気産業向け薄板事業を束ねる山田起王威第二営業本部長がその切り札としているのが、薄板の 「ブランク加工」 だ。

 自動車のドアやルーフを加工する前に、鋼板を金型のサイズに合わせて切断・加工するというものである。

 このブランク加工では、少しでもホコリが入ると変形してしまう。そこで、ラインをビニールで覆い、さらにビニール内の気圧を上げるなど、あの手この手で品質と歩留まりを上げている。自動車メーカーが 「 ここまでやってくれたのか 」 と驚きの声を上げたほどの徹底ぶりだ。

 「 鉄は国家なり 」 の恩恵にあずかり、その座から突き落とされた商社は、鉄鋼部門を “儲からない” とばかりに切り離した。しかし、90年代以降、こつこつと海外展開されてきたコイルセンターは

 「 すきまのニーズを察知して、そこに食らいつくどん欲さこそがカギ 」 (山田本部長) と任じ、生き残りを果たしている。

 資源価格の上昇の恩恵にあずかって莫大な利益を上げる金属資源部門には大きく劣るものの、メタルワンの2010年当期純利益は188億円。その3分の1ほどをコイルセンター関連が稼ぎ出す。
posted by ヒデキ at 23:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 商社の不思議 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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