2012年08月11日

伝説の商社マン (10) 新浪剛司 

  新浪剛司 (53)、三菱商事からローソン社長へ

 世界を飛び回る商社マンにあこがれていました。ところが、念願かなって入社した三菱商事で配属されたのは砂糖部門。花形は穀物や水産で、砂糖はやっかい者扱いでした。

 入社前に起きた相場の大暴落で、砂糖部門は大きな損失を抱えていたのです。
「 砂糖のせいでボーナスが減った。 」 などと風当りも強く、同期からも
「 将来、大変だな。 」 と同情されました。

 それでも職場は 「 負けてはいかん 」 と意気軒高でした。リストラで人員も少なく、新人にも大事な仕事を任せる。

血気盛んで、人より早く出世しようと意気込んでいました。
新人の頃、先輩に 「どうしたら人より速く出世できるのでしょうか?」
とたずねました。

 「誰よりも早く出社して、誰よりも遅くまで残業しろ。人の2倍働けば、会社の中身は手に取るように分かる。それが出世の鍵だ。俺の言葉を疑うな。明日からやれ。」と言われました。

言われるがまま、その翌朝から実践しました。

 朝一番でオフィスに来ると、海外から山のようなテレックス(当時はEメールなどありませんでした)が届いていて、テレックスの山を整理しているうちに世界と進行している商談の中身がたちどころに分かり、同僚の一歩も二歩も先を行くことができました。

 米国留学の経験がある課長が早朝に読書会を開き、最先端のマーケティング理論を教えてくれるなど、刺激に満ちていました。井の中のかわずにはなるまい、との思いから社外の勉強会にも通い、同世代の官僚や異業種のビジネスマンと接触しました。

  念願の留学を果たす 

 米国留学したのは29歳の時です。ハーバード大のビジネススクールに行きたくて社内試験を受けましたが、2回連続不合格。通常は合格後に会社の推薦状をもらうのですが、自分で受けて留学しようと決意しました。

 留学試験を受け願書を出すと、合格。人事部も渋々認めてくれました。

 ハーバードでは必至でした。授業ではとにかく発言しなければならない。1割程度の学生は落第します。寝るのは3、4時間で、血尿も出ました。

 企業経営はどうあるべきか。財務やマーケティングなどの知識を詰め込みながら考えたことは今も役に立っています。

 居場所を探す 

 MBA ( 経営学修士号 ) を得て帰国したのですが、実は受け入れてくれる部署がなかった。当時はMBAの評価も高くなかったのです。最後に決まったのは、冷凍食品部門。興味がわかず、転職を考えました。

 「 この会社はやりたいことがやれる。冷凍食品が嫌ならほかの事業を提案しろ。 」 ある先輩にそう諭されて目が覚めました。フランスの会社と提携し、病院向け給食事業に参入しました。

 その後、経営難に陥っていた日本ケンタッキーフライドチキンの再建も手掛けました。6年間、外食産業に携わりました。

 課長だったころ、若手時代の勉強会で知遇を得たダイエーの創業者、中内功さんから 「 ローソンの株を持たないか 」 と打診がありました。

 親会社のダイエーを再建するための資産売却です。2000年に三菱商事は1700億円でローソン株の2割を取得し2001年には筆頭株主になりました。

 社長で行ってほしいと命じられたのは2002年、43歳のとき。佐々木幹夫 ( 現相談役 ) が 「 実るほど頭を垂れる稲穂かな、だ 」 と送り出してくれました。偉くなってもふんぞり返るな、との念押しです。

 三菱商事が1部上場企業社長に役員経験もない社員を出すのは初めてでした。

 骨を埋める 

 ローソンは予想以上に弱っており、激動の日々が始まりました。売れなくても粗利益が大きい商品を仕入れ、店舗に押し付けるような商売をしていたのです。

 退路を断たなければ抜本的改革はできないと三菱商事を退社しました。

 何より看板商品が欲しい。最初に手掛けたのはコメと具材にこだわったおにぎりです。加盟店への商品説明は自分でやりました。30分から1時間の説明会を1日に
4,5回開く。

 声はかれ、へとへとになる。その後、社員と飲む。骨をうずめる覚悟を見せたかったのです。若さゆえ乗り切れたのでしょう。経営が軌道に乗ったのは2年目です。

 インターネットと店舗の融合、アジアや中国での事業展開など、やるべきことはまだまだあります。セブン−イレブンと切磋琢磨しながら世界に冠たるコンビニにしたいと考えています。

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   新浪剛史 − 1959年、神奈川県生まれ。1981年慶応大学経済学部卒、三菱商事入社。生活産業流通企画部でローソン事業兼外食事業ユニットマネージャーなどを経て、2002年5月からローソン社長。

 2010年4月から経済同友会代表幹事。趣味は読書、映画鑑賞、ゴルフ。好きな言葉は
「 垂線垂範 」。 

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posted by ヒデキ at 19:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 伝説の商社マン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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